私しか、知らないで…


気付いたら先生の顔が目の前にあった



「え…」



慌ててイヤホンを外した



「ごめん、邪魔して…
いつも何聴いてるの?
オレ音楽とか聴かないから…」



「先生も聴いてみる?
えっと…最近好きなのは…
コレかな…」



スマホから流れる音楽に
先生は耳を傾けた



「へー…
今、これが流行ってるんだ」



いろんなことを知ってる先生が
知らないことなんてあるんだ


不思議な気持ちになった



「先生は、なんの本読んでるの?」



デスクにたくさんある本を見て聞いた



「あー、コレ?
花澤が読んでも面白くないと思うけど
だいたい生物の本
花澤は、何読んでるの?」



「私はだいたい恋愛小説です
先生が読んでも面白くないと思います」



「んー、確かに
読みたいジャンルではないな
花澤は、恋愛とか興味あるの?」



「恋愛…
実際できないから
小説を読んでるのかも…

今のところ何の役にも立ってないけど
私もいつか彼氏できたらいいなぁって」



先生、聞いてる?

先生はまたパソコンを見てた



なんか恥ずかしくなった



「じゃ、帰ります」



慌てて準備室を出た