私しか、知らないで…


紫苑は毎日オレのアパートに来て

水槽を眺めてた



「紫苑も熱帯魚に興味もった?」



「亜南は?
亜南は、私に興味ある?
私のこと、好き?」



「え…」



突然の質問に戸惑った



「私ね
毎日、熱帯魚見に来てるわけじゃないよ

亜南に会いに来てるんだよ

好きだよ、亜南」



オレの目を真っ直ぐ見て紫苑が言った



「うん…オレも好きだよ」



「初めて言ってくれた

ごめんね
無理に言わせたみたい…」



「別に無理なんか…

オレのこと好きって…
林檎と同じぐらい?」



「なに、それ?
亜南、よくそぉ言ってるけど…」



紫苑が笑った



「だって林檎もらう時
好き…って…」



「うん、林檎も好きだよ

じゃあ、亜南は?
私のこと、林檎より好きなの?
熱帯魚より?」



「うん、好きだよ

朝起きて、紫苑のこと考えて…

トースト噛りながら
紫苑、起きたかな…って

歯磨きながら
今日は紫苑に会えるかな…って

魚にエサあげて
紫苑に会いたいな…って

そろそろ出掛けようかな
紫苑、今日はどこ行くかな…

自転車乗りながら
紫苑のアパート行こうかな…

帰って来て
水層の音、聞きながら
紫苑にキスしたいな…

紫苑はキスしたくないかな…

紫苑はオレと抱き合いたくないかな…

紫苑、何してるかな…」



「アハハハ…
わかった
わかったよ

好きなことを話してると
夢中になって止まらなくなる亜南
好きだよ

ずっと私のこと
考えてくれてるんだね

私もだよ

亜南とキスしたいよ

亜南に抱きしめてもらいたいよ

亜南、好きだよ」



本能のまま紫苑にキスした



ーーー



「痛…」



紫苑の唇が切れて血が出た



「あ、ごめん…」



「もぉ…亜南
急にするから…

大丈夫…大丈夫だよ」



紫苑がティッシュに手を伸ばした



オレは動物が傷口を舐めるみたいに

紫苑の唇に滲んだ血を舐めた



「亜南に、そんなキス教えたっけ?」



「今のは、キスしたつもりじゃ、ないけど…」



「フフフ…」



紫苑は笑ったあとオレにキスした



ーーー

ーーー

ーーーーー



微かに血の味がするキス