オレにしか、触らせるな!


「なんで、乗らなかったの?」



「え…」



棒くんから声を掛けてくれたことに驚いた



「避けてる?オレのこと」



「う…ん…避けてるっていうか…
棒くん、苦手だって言うから…」



雨の音で

少しだけ声が遮られる



「オレんち、母親いなくて…

男ばっかりで生きてきたから
女の人が苦手」



「そーなんだ…」



「だから…それで…」



「うちは、ママと私のふたりだよ」



「そーなんだ…」



「逆だね!」



「…」



あ、せっかく話してくれたのに

話終わっちゃう



「あ!ご飯とか、どーしてるの?」



「大学生の兄が作ってる
オレもたまに作る」



「へー!棒くんも作るんだ!」



「うん…でも、美味しくない」



「私も料理苦手!
ママも下手〜
遺伝かな…
そんなとこ似なくてもいいのにな」



時折少しだけ

棒くんと目が合う



「顔もママに似てるってよく言われるけど
お父さんの顔見たことないから
どっちに似てるのかは、わからない」



「そーなんだ…

うちはみんな父親似かな…
でも、オレが1番母親に似てたかも…

わかんないけど
自分でそぉ思ってるだけかも…」



棒くん

お母さんのこと

きっと好きなのかな?



「うちのママと棒くんのお父さんが結婚したら
おもしろいね!

ドラマとか映画だとさ
親が再婚して
偶然同じクラスの子と兄妹になったり…
ホントは好きだった気持ち言えなかったり…

って、おもしろくないか…
実際ないよね…」



ないよ

好きだったとか



変な話しちゃった



「みんな、大人の都合だよね…」



あ、暗くなちゃった



「うん、大人の都合だよ」



本当のことだもんね



「あ、ごめんね、私、何も知らなくて…」



「ん?なに?」



「えっと…
棒くんが女の人苦手だって知らなくて…
いろいろ話し掛けたし、近付いた」



「あー、うん…」



「でも、なんか今日
棒くん
結構普通に話せてるよ!」



そう言ったらまた

棒くんが緊張したのがわかった



「あ、ごめんね
気にしないでね…」



「うん…
これでも彼女がいたこともあったんだ」



あ、みんなが言ってた

先輩と付き合ってたって



「その時は大丈夫だったの?」



「うん、その時、気付いた
それから
話す時、すごく緊張したし
なんか、触られたりすると
ダメだった」



「じゃあ…
もしかして克服できてるかもよ!
今だって…」



「永野さんは、男性恐怖症って言ってたから
オレには近付いて来ないっていう
安心感ていうか…

共感できたりするのかな…って
それで、少しは、話せる」



どーしよ…



棒くん

ごめん



「ごめん…
ごめん、棒くん!

私ね、
私、ホントは男性恐怖症じゃないの

嘘っていうか…
大袈裟…っていうか…

恋愛に興味がないの

告白とかされると断わるのめんどくさくて
そう言ってたの

ごめん!
棒くんのこと、騙してた」



「…」



「ごめんね、尚更女の人嫌いになった?

ごめんね、私のこと嫌いになった?」



「嫌いに、ならないよ…」



「今までどおりいてくれる?」



「うん…

オレも騙してる…
永野さんのこと」



「え…?」



「いつも本読んでるの
女子が話し掛けて来ないように…

オタク?陰キャ?
キモいって思われてた方がずっとラクだから

メガネも伊達メガネ

ホントはみんなとバスケしたいし
ゲームの話とかしたい」



「そーなんだ…

やっぱり
バスケしてる棒くんが本物なんだね!」



「どっちもオレだけどね」



棒くん

今少し笑った?



「永野さん
なんでオレには話し掛けてくれたの?」



「学校だと棒くんいつもひとりだし…
バスで隣になって
同じクラスなのに無視するの嫌だった」



「へー…
ひとことで言うと、同情だね」



「そーじゃない…」

気がするけど

「そーかも…」



「永野さんて、正直だね
嘘つきじゃないよ」



棒くんも

きっと

人を騙すような人じゃないよ