オレにしか、触らせるな!


秋の風が背中を撫でた



「帰ろっか…

永野さん寒くない?」



「うん…熱い…」



「だよね…オレも…」



ふたりで笑って

熱くなった手を繋いだまま歩いた



月が明るいからかな?

ライブが楽しかったからかな?

永野さんがかわいいからかな?



なんか今日は調子に乗っていい気がした



「永野さん…」



「ん…?
熱いけど、大丈夫だよ!
手、離さなくても…」



また永野さんを見たら

今度は目が合わなかった



永野さんが目を閉じてたから…



「これで、い?」



目を閉じたまま永野さんが言った



え…

ドキン…



意味がすぐわかって

もっと熱くなった



かわいい



長い睫毛がカールしてて

頬がピンクに染まってた



永野さんの唇に

ゆっくりオレの唇を重ねた



ーーー



ゆっくり目を開けたら

オレと永野さんの影も重なってた



「好きだよ…

…瑠愛…」



ドキドキ…

ドキドキ…

ドキドキ…



永野さんの目がゆっくり開いた



「…どーしよ…」



また永野さんは下を向いた



「…ん?今度は、なに?」



なんか

違った?



ヤバ…

オレ調子乗りすぎた?



「困る…

ライブの興奮
全部忘れるぐらい
私、ドキドキしてる」



ドキドキ…

ドキドキ…



「え…なんか、ごめん…
オレ…」



少し屈んで永野さんを覗き込んだ



ーーー



え…

ドキン…



永野さんが背伸びして

急にまたオレの唇に重なった



急すぎて目閉じる余裕なかった



かわいかった

永野さんが

ギュッて目を閉じた瞬間が見れた



「颯…好きだよ!

仕返し!

どぉ?」



「え…

かわいい…

オレも全部忘れた
ライブのこと」



「よかった」



ふたりで笑った



笑ってる顔も

困ってる顔も

照れてる顔も

キスする顔も



全部

かわいくて

大好き



伝わってるみたい

オレの気持ち



好きだよ

瑠愛