オレにしか、触らせるな!


「この辺にする?」



振り返ったら永野さんがいなかった



アレ?

オレのTシャツ掴んでたのに…



「棒くん!
ごめん、早速はぐれちゃった」



人混みの中

永野さんがオレを追い掛けてきた



「オレも、ごめん…
ちゃんと見てなくて…」



「んーん!私がちゃんと掴んでなかったから」



またオレのTシャツを掴んだ永野さんが

かわいかった



オレのすぐ隣

永野さんが並んだ



「永野さんこっち来る?
ここなら、見えそう?」



「うん!見える見える!」



嬉しそうにはしゃぐ永野さんから

甘い匂いが香った



ドキン…



Tシャツじゃなくて

手を繋いでたら

きっとはぐれなかったはず



付き合う前に一度繋いだ

傑に邪魔されたけど…



小さくてかわいい手だった



今なら繋げるかな



ドキ…

ドキ…

ドキ…



オレのTシャツを掴んでる

永野さんの手をそっと繋いだ



ドキ…

ドキ…

ドキ…



「…どーしよ…」



永野さんが下を見た



「ごめん、嫌だった?」



オレは真っ直ぐ見たまま聞いた



オレ

タイミングおかしかった?



やっぱり

今じゃなかった



「んーん…
嬉しくて、恥ずかしい…

ライブまだ始まってないのに
熱い…」



ドキン…



「うん、オレも…」



なんだ、よかった



よくないか…

永野さんの口癖うつった



かわいくて

心臓壊れそう