オレにしか、触らせるな!


ふたりで果てたあと

換気扇の音が急に鬱陶しく感じた



クーラーで冷たくなってるフローリングで

汗ばんだ肌が気持ちよく冷やされた



隣で渉香のまだ荒々しい呼吸が聞こえて

我に返った



ヤベー…

ヤッちゃった



結婚式で飲んだけど

そんな酔ってた自覚もなかった



今までも飲んだ流れで女の子と寝るとか

絶対なかった

…はず



そんなに欲求不満だったかな…

だったかも…

そーだったかも…

絶対そーだった



自分をなだめた



渉香にまだ感情があるとか

思いたくなかった



「傑くん…」



天井を仰いだまま

オレの指に渉香が指を絡めてきた



「…ん?」



「キスして、ほしい…

あの時みたいに…

あの時みたいに、キスしてよ…」



あの時って

いつだよ



渉香が二股してた時?

オレを颯と重ねてキスしてた時?

渉香に夢中になり過ぎて周りが見えなかった時?



今更なに…?



そんなことしたって

あの時には戻れない



あの時は取り戻せない



バカじゃねーの?



「しない…

するわけないじゃん

オレ、1番の子にしかしないから…」



あの時

渉香の中では

オレは2番だったかもしれない



でもオレは

渉香が1番だったんだ



目の前にいる渉香しか見えてなかった



渉香は?

ちゃんとオレを見てた?