はぁ、と息を吐き、気持ちを落ち着かせる。
トウヤのことを忘れているフリをして、
クラスメートの男子のように避けていたら、
周りはいつもの “ 男嫌い ” だと認識するだろう。
うん、“ 私 ” を私の中にしまうだけ。
「よしっ」
小さく口に出し、勢いよく立ち上がる。
その瞬間、
「やっぱりミズキだ」
先ほど聞いたような、低く男らしい声が耳を通り抜ける。
声のした方向へ体を向けると、
うちの制服とは違う、茶色のブレザーに黒のズボンをすらっと着こなして、
こちらを見つめる男性。
「トウヤ、、」
頭が理解する前に、彼の名前を呼んでしまっていた。
「久しぶりだな!まさか、ここでミズキに会うなんてな」
ハハッとあの頃と同じように、子供みたく笑う顔。
「元気にしてた?」
驚く私の顔を覗き込むようにして、
距離を縮める彼。
さっき心の中で決めたはずなのに、
いざ目の前にしてしまうと、頭が真っ白だ。
「い、いや、私は、、」
真っ直ぐな彼の瞳に、目が泳ぐ私。
「俺のこと忘れてるわけねぇよな?
だって、ゲームで153戦中、90勝、、
「89勝!!!」
ハッ、しまった。
咄嗟に口から出た言葉に、唇を片手で覆う。
