その一文字一文字を舐めるように見つめる。
〈 松沢 透矢 〉
くるりと身を翻し、その人物はクラスメートへと体を向けた。
「松沢トウヤです。父の転勤で、引っ越してきました。よろしくお願いします」
、、、え?
低いけれど、男らしい声のトーン。
私の記憶にある声の高さとは違うが、その言葉に聞き覚えがあった。
『松沢トウヤです。父の転勤で、引っ越してきました。よろしくお願いしますっ!』
まるでデジャヴのように、記憶のワンシーンが頭の中で再生される。
トウヤだ。
中学2年生の秋、ちょうどこの時期に
黒のぶかぶかの学ランを纏って、高い声で挨拶をしていた。
なんで、トウヤがここに、、
咄嗟に、パッと顔を下に向ける。
中学生の頃の自分を知る人物に、ここで会うなんて。
いや、待って。もしかしたら、別人かも。
松沢透矢なんてよくある名前だし、
父親の都合で引っ越すなんて、
漫画ではよくある話だし、、
そーっと顔を上げて、教壇に立つ彼を見る。
クラスメートが彼を上から下まで見るのに便乗して、
私も視線を動かす。
くっきりとした二重幅に、筋の通った鼻。
シュッとした輪郭の小顔で、イケメン部類の顔立ち。
身長は全然違うけれども、その顔立ちには
当時の面影がある気がした。
そう確信づいたような瞬間、彼と目が重なり合う。
私はパッとわざとらしく、視線を机の上に。
うわ、目が合っちゃった、、
