それから、夏休み中は何してたとか、
宿題の続きがどうのとか、
他愛のない話を続けているうちに、いつの間にか高校の門の前に辿り着いていた。
私立橘高校。
門をくぐり抜けたら、エントランスの前に大きな掲示板がある。
『学園祭まで あと 30 日 !!!』
ポスカで塗られたその大きな文字の前に、吸い寄せられるように立ち止まる。
「もう学園祭か〜」
「高校最後の学園祭だよ、寂しくなるね〜」
「今年は何もしない!」
マナミ、エリ、ノッチの順で次々に感想を述べる。
「ノッチ、去年は実行委員だったもんね」
「大変そうだった〜、エリも絶対したくない!」
ノッチの去年の働きぶりは、すごかった。
ジャンケンで決まってしまい、もう一人の子と当日まで駆けずり回ってた。
あのマイペースなノッチが、当日1週間前は人が変わったようだったのを覚えている。
大変そうだな、と思ったけれど、
それと同時に羨ましくも感じた。
だけど、私には出来ない。
前に出るキャラじゃないし、人の注目を浴びるのが怖い。
入学から三年間、こういうことも避けてきた世界である。
「ウチのクラスだと、田島さん。立候補しそうじゃない?」
思い耽ってるうちに、話題は様変わり。
エリの甲高い声に、ノッチが声を重ねる。
「いや、あの人は皆んなからの推薦待ち。
すごいプライド高いし」
さすがノッチ。
マイペースに見えて、よく人を見ているから、クラスメートの考察も鋭い。
