「お待たせっ、ごめんね?」
これがいつものフレーズ。
「全然待ってないよ。ほら、ノッチ起きて」
クールなマナミが、ノッチの頭をペシっと叩く。
「んん、おはようございらす、、」
片目はつむったまんま、口も動いてない様子でヨッと手をあげている。
そんな姿を3人で呆れながら見つめる。
「アンタより、ミズキのほうが眠いんだから」
「ホントだよ。ミズキは朝5時起きなんだから!」
マイペースなノッチに一喝するマナミと、私の左腕に腕をからませ、ねっ?と相槌を促すエリ。
「私は早起き得意だから。全然眠くないよ」
ハハハッ、と半笑いで返す。
眠くないなんて、半分嘘になるけれど。
寝起きがいいのは、幼い頃からの特技みたいなものだ。
「え〜、本当感心するよミズキには。
そんなにこの高校、良かったっけ?」
自然と歩き出した3人につられ、私も慌てて足を揃える。
エリの言った言葉が、グサっと胸に刺さる。
「前も聞いたよね。地元から電車で2時間もあるところなんて、普通通わないよ」
マナミもエリに同調するように、言葉を重ねる。
この3人でつるむようになった頃、こんな話題になった覚えがある。
その時も、今のように緊張が背中を走る。
「、、制服が可愛くて」
本当のことなんて、言えるわけがない。
エリたちと出会ったのは高校1年の初め。
この高校で初めて出来た友達だ。
だけど、未だに心を開くことはできないでいる。
「やっぱり、そんな理由〜?たしかに、可愛いけどさあ」
プクゥッと頬を膨らませて、自分たちの制服を見比べるエリ。
「ミズキって変わってるよね」
ようやく起きたようなノッチが口を開いて、会話に入る。
“ 変わってる ”
ノッチはたまに、私の核心を突く。
その度に、背筋が凍るのだ。
「そ、そんなことないよ。エリだって、制服で選んでるでしょ?」
