「おはよう、ございます。私は……、藤堂、周と言います」


とろとろと自己紹介して頭を下げれば、ポケットからペンを取り出した人が、“あまねちゃんはナオの”まで書いたところで、私の右横から腕が伸びる。


花岡はあっという間にペンを取り上げて、この間と同じように私と男性の間に入った。いつも背中ばかりを見ているかもしれない。


「(いや、南朋邪魔)」

「(ああ? 勝手に上がり込んでなんだてめえ)」

「(顔こわっ。少しくらい交流してもいいじゃん)」

「(帰れ)」

「(いやいや、周ちゃんの服は?)」

「(もらう)」

「(サイズとかあるだろ)」

「(全サイズ置いていけばいいだろ)」

「(横暴すぎる)」


何かを話している。また置いて行かれているのだと思ってから、自分の汚い思考回路にうんざりしてしまった。勝手に難聴になったのは、私のほうだ。


「(周ちゃん、耳元で話せば聞こえる? んだろ? すこし話させろよ?)」

「(帰れ。あと名前を呼ぶな。穢れる)」

「(いや俺どんな扱い?)」


ちらりと背中から顔を出してみれば、嘆く姿が見える。首を傾げれば、私を見つけたその人がひらひらと手を振ってくれた。話の邪魔をしてしまった。


「(やっほ~。俺ぇ、巷で噂の智和(ともかず)くんだよ~? あまねちゃ~ん?)」