つながった手に引き戻されて、同じ場所に座り込んでしまう。私の姿を見たおばあさんは、当然のように二回頷いて自分の胸を叩いた。

任せなさいとでも言ってくれているのだと思う。何一つ手伝わないままでよいのだろうか。不安になって横を見れば、気にした様子のない人が「黙って座っとけ」と囁いてきた。


「なお、ちゃん?」


衝動的に呼べば、花岡の視線が、はっきりと私を見た。すこし驚いたような顔を作ってから、どうしようもなく笑ってしまっている私の表情を見て、複雑な顔色になった。


「南朋ちゃん、って呼ばれてるんですか」


もう一度言えば、きゅっと頬を抓られた。

まさかそんなことをされるとは思わなくて、今度は私が目を丸くしてしまう。反応に満足したらしい人が、たぶらかす声で言った。


「あまね」


聞いたこともないような音に吃驚して、すぐに体が後退してしまう。私の姿を見た花岡が満足そうに笑っている。私がその声に唆されて、おかしな気分を起こしてしまったら、いつでも吸い込まれてしまうのだろう。


「あまね」

「ひっ、く、くすぐたいです。やめてください」

「そうか?」

「すこし遊んでませんか?」

「いや? ああ、そうだな。反応がかわいいから」


絶句してしまった。

可愛いから。何度か反芻して、あまりにも聞きなれない言葉に目が回る。こんなにも近くで吹き込まれてしまったら、翻弄されて、ぐちゃぐちゃになってしまうだろう。

危険な人だ。