作曲したデータを送るたびに、少し違う、と囁かれた。その軽微な歪みを繕いなおしているうちに、また歪みが生まれる。そうしていつの間にか、私の手から零れ落ちてしまっている。
男は、当然私の体に乗り上げた。眠っている私の首筋にやさしく触れて、真綿で絞め殺すように徐々に力をこめる。
息苦しさでようやく目を覚ました私が、目を白黒させながら、必死で空を蹴っていた。張り詰めた爪先が何一つ状況を変えてくれないさまを見て、ただ、そろそろ死ぬのだと理解した。
――これは、願望だろうか。
必死でもがいていた足が、ぐったりとベッドから零れ落ちる。まるで、半分死んだような心地で見つめて、ゆっくりとこちらを振り返ったディレクターの顔に、瞼がぐっと開けた。
「……っはぁ……、はあ」
額から汗が流れている。頭と机の間にいれていた右腕がぐっしょり濡れていた。運動をした後みたいな酷さだ。呼吸を整えて、部屋にかけられている時計を見つめる。
たったの15分しか経っていない。すでに眠る気が失せて、椅子にもたれかかった。
ひどい夢だった。彼は、どうしてこちらを振り返ったのだろう。混乱するまま、ただ額の汗をぬぐって、深呼吸を繰り返している。逃げられないと言われている気がした。


