やさしいベッドで半分死にたい【完】


すぐ近くの軒先まで小走りで駆けて、なだれ込むように店の中へと足を踏み入れた。

中は子ども向けの玩具屋さんのようだ。

所せましと玩具が並んでいる。すこし埃っぽい匂いのここへは、多くの人間が来ているわけではないのだろう。ぐるりと見回せば、横から「少し見ていくか」と耳に吹き込まれた。


一歩離れて頷く。

調子が乱されたまま、勝手に店内を歩き始めた。きっとすぐ後ろにいるのだろうけれど、顔を見ているだけで感情がぐちゃぐちゃにかき回されてしまいそうな気がして恐ろしい。逃げるように奥へと突き進んでいた。

進んでいけば、むき出しの螺旋階段が見える。二階は何が置かれているのだろう。興味を引かれて、ちらりと後ろを振り返った。花岡なら、その先に何があるか知っているのだろうか。


「あ……」


乱されるとわかっていながら問いかけようとして、花岡が遠くで、耳に携帯を当てている姿が見えた。

距離が離れているから、花岡は私が振り返ったことに気づいていないのかもしれない。眉を顰めながら、何かを話しこんでいる。

私からは見えないところで、何度かそうして誰かと連絡を取り合っている姿があった。

それなのに、私は知らないふりをしながら、花岡の指先に触れ続けている。

罪に触れたような心地がした。