メイン会場から少し距離を置いて、見晴らしのいい場所に来た。
人もまばらで窮屈じゃないから風もよく通る。


汗ばんだ額をそっと拭う。
翔ちゃんの浴衣の裾がふわりと揺れた。


「疲れた?」

「ううん、全然」


路肩の縁に座って夜空を見上げたらホッとして、なんの脈絡もなくしゃべりだしちゃった。


「わたし、あれみたいんだよねー」

「あれって?」

「打ち上げ花火、どこから見るか……みたいなやつあったでしょ」


映画のタイトルなんだけど……記憶力が悪すぎてうろおぼえ。


「花火なら美緒と見るけど?」

「いや、そうじゃなくて」

「二人で見るけど」


質問じゃなくて、あの映画を一緒に観たいなって話をしたかったんだけど、まさか天然ボケが炸裂するなんて。


しかもなんかムキになってるし。
でもたまに出るそんな翔ちゃんもかわいい!