もうすぐ終わってしまう。
もう二度とはこない、この夏の花火が翔ちゃんの目にはどんなふうに写ってるんだろう。


この一瞬のきらめきを、翔ちゃんがどんなふうに感じてるのか知りたい。


ふと隣を見上げたら、空を見上げてるはずの彼とばっちり目があった。


打ち上げ音を追いかけるみたいに光って咲いた鮮やかな色彩がその頬に映ってる。


少し切なげに私を見下ろしている視線に
ドキッとした。
でもなんで目が合うんだ?


「ねぇ、花火ちゃんと見てた?」

「あー、あんまよく見てなかったかも」

「え!」


その時とびきり大きな音と光との連発が目映いくらいに私たちを照らした。
花火を見上げていないのに、眩しいくらいに。


でもそれを最後に花火大会の終わりを告げるアナウンスが遠くから聞こえて、翔ちゃんの顔が見えなくなった。
花火の終わった空に、暗い夜が訪れた。


「最後の花火楽しみにしてたのに……」


翔ちゃんのせいで見逃したじゃん。
そう不満をこぼそうとした唇に、暗闇で優しく触れたこの感触は、まさか。