その瞬間、私の肩が確かに震えた。
「広だ…」
「ん?どうしたつばき?」
「……」
「ん!?……てか見て!あの人やばい!かっこいい!」
萌子は広を指さした。広がまさか、こんな所にいるなんて、思いもしなかった。
逃げたい。
永斗の試合には集中できないかもしれない。そう感じた。
「つばきー?大丈夫?具合悪い?!」
「ううん!大丈夫!」
「あ!永斗ー!行け〜〜!!!」
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる!」
絶対顔を合わせなくて済むように、試合中にトイレに行くことにした。体が震えるほど、広が恐ろしい。私は、広を避けていると実感した。
「痛っっ!!」
階段で足首を挫いた。サッカーの試合だと言うのに、なぜか可愛いヒールで来た私が悪い。
「ちょっと座ろ…」
独り言を呟き、ため息をついた。広がいるだけで、ドッと疲れる。
「つばき〜!大丈夫?遅いから心配で迎えに来たよぉ」
「ごめんごめん〜!ただいま!」
「あ、永斗!!と…あ!あのイケメン!」
————時が止まる。
心臓の奥が、きゅーっと締まるような、そんな感覚。
「よっ!お前ら俺のスーパープレイ見たか!?」
「……」
「俺行くわ!永斗お疲れ」
広は私を見た瞬間、その場を立ち去った。
「あれっ?まさかつばき、知り合い?」
萌子が不思議そうな顔で聞く。
「うん、幼なじみみたいな…もう、仲良くないけどね」
「へぇ〜…」
永斗と萌子が顔を合わせ、また不思議そうに私を見ながらそう言った。
