「じゃあね、つばき」
「うん、頑張って萌子」
最後の花火が打ち上がり、花火大会が終わった。
帰り際、屋台でリンゴ飴を2つ買った萌子は、1つ上条くんに上げるんだと、笑顔で去って行った。
私がこれから永斗に会うことは、萌子に話せていない。いつも一緒にいる私たち3人の関係が、壊れてしまうんじゃないかという不安があったからだろう。
何でも言い合えると思っていた矢先、言えていない事実があることに、申し訳なさが溢れてくる。
「……あっ、もしもし?今萌子と解散したよ」
「おぉ。駅前のカフェにいるわ」
「了解!すぐ着く!」
時刻は、まもなく21時になる。
広と手を繋いで歩いた時まだ明るかった空は、真っ暗になっていた。こんなにも時間が経つのが早いと感じたのは、いつぶりだろう。
「お待たせ〜!永斗〜!」
「おー!似合ってんじゃん!」
永斗は、私の浴衣姿に、珍しいものを見るような目を向けた。
「あ、ありがとぉ!どうする?お茶してく?」
「どっちでも!まぁとりあえず座れば?」
「あっそうだね」
席に着き、いつも通りを演じる。私、大丈夫かな……口角上がってるかな……
「急にびっくりした?2人でとか言われて」
「うん、なんか分かんないけど、緊張してる実は……」
つい本音がこぼれてしまった。
「……何か相談とか?永斗も恋愛相談?」
「永斗もって?まさか、萌子、ついに!?」
しまったぁ〜……やたら勘が鋭い永斗に、萌子のことを気付かれてしまいそうだ。まだどうなるか分からないことを、気安く言えない。萌子の口から聞くべきだろう。
「いやいや!そんな深い意味はなくて!永斗も恋愛に悩むのかなぁって思って」
ふわっと交わせたはずだ。
「相談なんか別にねぇよ」
「ないんかーい!!」
「ただ普通に、会って話したかっただけ」
「そっ…かぁ…」
「行くか!歩くぞ!」
永斗は私と、何を話したいんだろう。
「つばき見ろよ!星!めっちゃ綺麗!すげぇ〜!」
「わぁ〜!!ほんとだぁ」
永斗がはしゃぐ横顔に、いつもと違う気持ちが押し寄せる。いつも側にいる永斗を、男として意識してしまった瞬間、気付かなかった永斗の魅力が次から次へと溢れ出す。
鼻の高さ、目の大きさ、腕の筋。男らしい首筋。胸板の厚さだって。今日、今この瞬間に、初めて……
永斗って、かっこいいんだなぁ。
初めて、そんな風に思ってしまった。心臓の奥深くがドクドクと、音を立てながら揺れている。
「なぁ、俺はさ、つばきに1番近い場所にいるよな」
「どういうこと?」
「だからさ、全男の中で、1番近いんじゃねーかってこと。俺が」
「う、うん……そう、だね。こうやって話したり、笑ったり、そんなことできる男の人は、他にいないよ」
「だから俺はさ、お前の1番近くで、お前にできることをするからな。ずっと」
「どういう、こと?……」
「萌子から、ちょっと聞いた。昔のこと」
「そっか……」
文化祭の日、萌子に全てを打ち明けたことを思い出した。中学校3年間、何があったのか、それがなぜ起きたのか、その発端が、誰だったのか。
永斗は、どこまで聞いたんだろう。
「へ?!ちょっとぉ?!永斗?!」
永斗が、私の頭をポンポンと叩いた。
そして
「俺はいつだって、お前を守れる。広とは違う。」
そう言って、私を真っ直ぐ見つめた。
