早めに着いた花火大会の会場も、花火が上がる時間が近づき、暗くなり始めていた。
通り抜けていく生ぬるい海風が、熱くも冷たくもなれない、私の心に似ていた。
「上条くんね、私のことを知ってたんだって。中学の頃から」
「えっそうだったの?なんで?」
「私ね、習い事してたの。フラワーアレンジメントの」
そういえば、萌子はよくSNSに可愛いお花の写真を載せていた。
「じゃあ、あの写真のお花は萌子が?」
「そうそう!あれは私の作品なの」
「わぁ〜!!すごいね萌子!!全部ちょー綺麗だなぁっていつも思ってた!!」
萌子の元気でハキハキとした姿ばかり見てきた私にとって、女の子らしい習い事について打ち明けた時の萌子の横顔が、少女のように愛らしく、抱きしめたくなった。
「それでね、上条くんのお母さんも、たまたま私が行ってる教室に通ってたの。それで、お母さんと私が話してるのを、外で待ってた時に見たんだって」
「なるほどねぇ〜それで知ったわけだ」
「最初は、顔がタイプで気になってたんだって。でも私が作る作品を、お母さんに写真で見せてもらう度に、美人で何不自由なく見えるけど、きっと繊細なんだろうなって、心の中が見えるような気がしたんだって」
「……」
「それで、俺にだけは、そういう部分を見せて欲しいって思うようになったって。だから、付き合ってほしいって。そう言われたの」
「……」
「ええええ待って、何何!?どうした!?なんで泣いてんの!?は!?つばき!?」
「……待ってやばい……わかんないけど涙が止まらん……」
「ちょっと〜!!」
「わかんないけど、なんかね、萌子の心の中っていうか、内面を、作品から想像してさ、萌子を理解しようとしてくれたことが、友達としてうれしいの」
そう言って顔を上げると、萌子の頬にも、大粒の涙が溢れた。
