混み合った花火大会の会場。
目の前を流れる人の波が、スローモーションのように見える。
声も出ない。息もしづらい。
指先が、一瞬にして冷えたように感じた。
「……」
「一人…か?…んな訳ないか」
広は、どんな気持ちで私に話しかけているんだろう。
広は、何で私を見つけるんだろう。
どうして今、目の前にいるんだろう。
「どうして……?」
「なに?」
「だから……どうしているの?いつも、いつもいつも、私の前に、どうしているのよ!!もう広が、何考えてるのか、何も分からないの!!辛かった3年間、返してよ!!」
「……」
伝えたいことは、もっと他にたくさんあった。
謝りもせず話しかけてくる広に腹が立って、大声を出してしまった。人混みで、誰も気に留めていない状況だけが救いだ。
「ごめん……ごめんな」
広は、小さな声でそう言って、私の手を握った。
ずっと聞きたかった言葉が、耳の奥深くを通り、頭の中に響く。
ずっと触れたかった広の手が、私のぽっかり空いた穴を埋めていく。
「全部……聞きたい……」
私の大粒の涙が、広の手の甲にポツリと落ちた。
「向こうに行こう。もう少し、静かなとこ」
そう言って広は、私の手を握ったまま、歩き出した。
