「……」
目が合ったまま、沈黙が続く。
こんなに広をちゃんと見たのは、いつぶりだろう。
気付くと涙が溢れ出していた私は、その気まずさから、走り去ろうとしていた。
「待てよ」
広の硬く結んだ口からポツリとこぼれた声は、私の足を止めた。
朝の光が、私を溶かすように
夜の街が、私を吸い込むように
動けない。
広の真剣なその瞳に、私は動けなくなった。
「……」
黙り込む私に、広は言った。
「永斗と同じクラスなんだな。あいつイケメンだしいいやつだろ」
突然の普通の会話に、この数年まともに関わりのなかった私は戸惑いが隠せず、何も言えなかった。
「なんか言えよ」
「……」
「……元気だったか?」
「ぅん……」
あれから何日も、来る日も来る日も、広を想った。
広が私から遠ざかっていった時から、ずっとずっと、今日まで。
好きとか、会いたいとか、そうじゃない。
何を考えてるの?何を信じてるの?って。
離れて行った理由を、いつだって考えていた。
元気なんかじゃない。
私は、元気なんかじゃないよ。
「ごめん。じゃあね」
広を見るのが辛い。心臓の奥の方がぎゅっと押しつぶされるように、痛い。
私は、気が付くとまた、走り出していた。
