キミと、光さす方へ

「人殺しの噂が立つのは別の人だと思うけどね」


泉が思い出したようにそう言った。


あたしはその言葉に1人の人物が思い浮かんでいた。


小学校時代から一緒の泉とあたしは、あの人物のことをよく知っている。


「烈のこと?」


聞くと、泉は頷いた。


上口烈(ウエグチ レツ)はこの辺では有名な男だった。


あたしたちと同じ小学校中学校を出ているが、高校には進学せず、裏の組織に入ったと聞いている。


どうしてそうなったのか、一番の決め手はなんだったのか、あたしも泉も知らない。


ただ烈はもともとそういう人だった。


小学校中学年あたりから素行に問題が出始めて、中学に入ってからはほとんど学校にも着ていない。


烈をどこどこで見た。


この前のあの事件、烈が犯人だったらしい。


そんな噂をよく耳にもした。


でも、あたしたちには関係のないことだった。


烈とあたしたちが生きている世界は根本的に違うのだ。


そしてその通りになるように、高校に入学してからは烈と会うことは全くなくなった。


ただ、この街ではどんどん悪名高くなり、噂ばかりを耳にするようになっていた。


「今ごろなにしてんだろうねぇ」


昔の烈を知っている泉は呟くようにそう言ったのだった。