キミと、光さす方へ

☆☆☆

「あら珍しい」


キッチンに立ってお菓子作りの本を真剣に見つめていたあたしに、お母さんが声をかけてきた。


「クッキーを作ろうと思うの」


「そう。誰かにプレゼント?」


そう聞かれて咄嗟に「泉に」と、答えた。


泉にもあげるのだから、嘘じゃない。


「それなら頑張りなさいね」


そう言ってお母さんがリビングへ向かってしまう。


あたしは慌ててその後ろ姿を呼びとめた。


「て、手伝ってくれないの!?」


「あら、琴江が頑張ってひとりで作った方が泉ちゃんも喜ぶんじゃないの?」


振りむいてそう言われると、反論できなくなってしまう。


「でも、だって」


と、ぶつぶつと口の中で呟く。


「大丈夫よ。ちょっとくらい失敗しても泉ちゃんなら食べてくれるでしょ」


お母さんは楽しげな声でそう言い、キッチンを後にしてしまったのだった。