「あ、えっと……松本くんって転校生で、やっぱり気になるっていうか、なんとなく似てる気がするっていうのは、言ったっけ?」


しどろもどろになりながら説明するが、途中から自分がなにを言っているのかわからなくなってきた。


「友達がいて普通に生活してきたヤツが、人殺しの俺の気持ちがわかるって言うのか」


松本くんが鼻で笑うように言った。


あたしは体の芯がスッと冷えていくのを感じる。


松本くんの激しい怒りが全身から湧き出ているのがわかった。


思わず後ずさりをしてしまう。


「そ、そんな噂、気にしてないし」


言いながら、声が震えた。


全然説得力がない。


松本くんは一歩近づいてあたしの右手首を掴んだ。


その手にギュッと力を込められる。


「い、痛いよ!」


咄嗟に逃げようとするが、それを許さないような強い力だ。


「噂は本当だって言ったはずだ」


ギリギリと松本くんの指が食い込む。


痛みと恐怖で涙が滲んだ。


松本くんがジッと見つめてくるので、逃げるように視線を反らせてしまった。


その瞬間、目に膜を張っていた涙が一粒流れて落ちた。


それを見た松本くんはあたしから手を話し、身を引いた。


「わかったら、もう関わるな」


ひとこと言い残し、松本くんは空き教室を後にしたのだった。