キミと、光さす方へ

「意味わかんねぇ」


勇人はブツブツと文句を言いながら、ベッド横にある床頭台に手を伸ばし、勝手に引き出しを開けた。


「なにも入ってねぇな」


「大した怪我じゃないんだ。明日もう1度検査したらすぐ退院できる」


ハッとしたように松本くんが言った。


引き出しの中から勇人は勝手にスマホを取り出した。


「これ、お前のだろ?」


「そうだけど」


と、松本くんは戸惑いを隠せない。


それでも勇人は気にすることなく、松本くんのスマホをイジリだした。


「うわ。アドレス全然登録されてねぇじゃん」


時々そんな呆れ声を上げながら、操作して、終わったら松本くんの膝の上に投げ出した。


「え、これ」


画面を見つめて松本くんが驚いた声を上げる。


そこには勇人の番号が登録されていたのだ。


あたしはくすっと笑う。


勇人らしいやり方だと思った。


「じゃあ、あたしも!」


呆然としている松本くんの手からスマホを取り上げて、あたしも自分の番号を入力した。


勇人の言っていた通り、アドレスにはほとんどなにも入っていなかった。


松本くんのお母さんお番号と、お母さんの職場の番号らしきものくらいだ。


それを見た瞬間チクリを胸が痛んだ。


松本くんはあたし以上に自分を殺して生きてきたみたいだ。