【でも、ちょっとならいいかな。実はお腹が空いていてね?死なない程度に味見したらいいかな。人間の血ってヤミツキになるんだよな。
濃厚で飽きがない。ふふふっ。】

にやけながら笑う者に女性の顔が固まる。




「………………え?いま、なんて言ったの?
人間なのに?え、死なない程度にって。あなた、いったい………………。」


【可哀想にねぇ。恨むなら、自分の人生に恨んだらいい。あの世界に関わる人間は餌だけでいいんだよ。】


呆然とする女性を見ていた者は、憐れみの目で見る。


クワバラ、クワバラ。
人間じゃなくて良かったよ。

なんて首を振りながら呟いていた。




【さてと。】

ペロリと面白そうに舌をなめずり、コツコツと足音を鳴らして女性へ歩いていく。



「ひっ!お願いします、助けて、見逃してくださ…………………。」

近づいてくる者に必死に懇願する女性の次の声は悲鳴に変わった。






ぎゃあーーーーーーーーーー!!!!!!




周りに響くような絶叫の声が響く。







【うーん。やっぱり人間の血は最高だね♩】

叫び声を聞きながら、ジュルジュル音を立てながら歓喜の表情を浮かべて口にする。



口の周りは血でベットリで肩には女性を乗せている。



その女性の意識はあるものの、ぐったりとして動かない。




【はっ、俺とした事が人質なのに、つい欲を出してしまった。イケナイ、イケナイ。君がイケないんだよ、美味しい匂いをさせるからね?って言っても聞いていないか。】

肩の上の女性を見てにやりと笑みを浮かべた。





【さてと。この娘が例の少女かは知らない。あの方に確認をすればいいだけか。それに殺さないのは利用価値もあるからな。行きましょうか、お姫様。待ちわびていますよ。】

返事をしないのを確認すると深い笑みを浮かべた。





【楽しみだねぇ。この娘がどうなるかはわからないけど。でも、あの血は絶対に目醒めさせてはいけない。人間なんて、あの世界には不要なんだよ。】



フフフと愉快そうに笑いながら闇の中へ歩いていった。