♡♡♡

「先輩、何か食べますか?それとも、ヨーヨーすくいしますか?」

「人多すぎて、疲れた」

「いや、まだ、なにもしてませんよっ」

お祭り会場を周り始めてまだ十五分も経ってないのに腕を組みながら眠そうに歩く先輩

人が多い所が嫌いなのかやっぱり機嫌悪い

隣を歩く先輩をキッと睨む


「なに」

「いーえ、かわいくないなって」

あ、そーだ

「先輩、手繋いでくれませんか?」

「は?」

冗談で言ったつもりが…

すごく、怖い顔でいらっしゃる

ふざければ、いつもみたいにつっこんでくれると思ったんだけどなあ

逆効果だったみたい

先輩から一歩距離を取る

「なんでもないです…」

「…誰にでもそんなこと言うの」

「え?」

周りは騒がしくて先輩の小さな声が私には届かない

ドンッ「わぁ」

通路は少し狭くて、人が多いからぶつかってよろけてしまう

膝から転びそうなり、ギュッと目を瞑る

先輩の前で恥ずかしい…!

「バカなの?」

「!」


意外にも先輩はぐっと腰に手を回して、支えてくれた

「あ、ありがとうございます」

思ったより、顔が近くて、パッと離れようとすると、呆れた顔でおでこを指で弾かれた

「ほら、行くよ」

腰に回していた手でそのまま、私の手を繋いでくれる


「あ、の、先輩」

「なに、繋ぎたかったんでしょ?」

少しだけ前を歩いてくれている、振り返った時に見えた意地悪な顔

大きな先輩の手が引っ張ってくれる

優しい先輩の手、私も少しだけ握り返す


「先輩、好きです」


「はいはい」


今だけ感じられる温かさをずっと独り占めしたくなった