扉がゆっくりと開かれる


「置いてくなよな」


「ん?ヒロ、お兄ちゃんと話し終わったの?」


普通に部屋に入ってきて、ベッドの前に座る

当たり前の光景


お互いに、しばらく喋らない時間が続く
でも、別に苦痛に感じることはない

小さい頃から、一緒だったから、こういう時間も別に不思議に感じない


ふいにヒロが

「なあ、本当になんもされてねぇの?」


思わずギクッとなってしまう

何にもなかったわけじゃない

でも、ヒロに言うのはなんとなく恥ずかしいし

「なにも、なかったよ?」



ヒロの目が少し怒ってるように見えた


「どうしたの?」


ベットに乗って私の隣に座る
なにも言わず、私に手を伸ばしてくる

指先で首をなぞられる


ビクッ


「首、ついてるけど、これでも嘘つくのか?」


首?


ヒロが触れている所に手をやってみるけど


何かあるわけじゃない


「なんもないよ?」


ヒロは顔を歪めて、私の手をとる


そのまま、くるっと身体を回されて
ヒロに後ろから抱き締められる形になる


「どうしたの?」


「…ちょっとだけ」



弱く呟かれて、何も言えなくなる


いきなり首元に顔を埋められて、反応してしまう

「んっ、やぁ」


優しく、何度も唇をつけてくる

くすぐったい


位置がそのまま、腕にずれる


「……っ」


ピリッと腕に痛みが走る


「な、に」


「同じの首についてたから、あいつへの仕返し」


なんのこと?


腕を見てみると



「!」



これ、キスマーク!?



「ちょっ、何でつけるの!」


しばらく消えないやつじゃ!ゴシゴシと腕を擦る


「俺だって、いつまでもこのままは嫌なんだよ」


「え?」


「…なんでもねーよ」


ぎゅっと抱きついてくる


いつもなら蹴り倒しているけど



なんとなく、ヒロが悲しそうだったから


振り向いて、頭を撫でてみる



「私、どこにも行かないよ?」


「……ああ」



しばらく、抱き締められたまま

離してくれた時には、いつもの笑顔で


「よし、今日の晩御飯の買い出し行こーぜ?」


私の手を引いて立ち上がるから、私も後を追いかけた


それから、一週間

ヒロは私の家に泊まり続けて、



最後に



「次会うときは、俺の事も意識しろよ」


そう言って私の頬っぺたにキスして

寮に帰っていった


その後


顔が真っ赤になってしまったのは私だけの秘密


次はきっと冬休みに来てくれるであろう

大切な幼なじみを笑顔で見送った