グイッ
「何してんの」
突然後ろに引かれて倒れそうになる
気づけば暖かい腕の中で、
不機嫌な声のした上を見上げる
「く、九条先輩?」
そこには、私服姿の九条先輩がいたんだ
「どうして、ここに?」
「近くの本屋に来てた」
先輩の顔を見上げると、何だか少し怒っているように見える
「あんたが、九条先輩?」
「…きみ、誰」
ぐっと私を包む先輩の腕が強くなる
「俺はヒロっていいます、羽華の幼なじみで、毎年夏休みは毎日、一緒に過ごしてるんですよ、あ、今日は羽華の家に泊まりなんで、先輩、少しだけ時間あげますか?」
ペラペラと言葉を並べるヒロに少し驚いた
ヒロ、なんでそんな意地悪な言い方…
顔も完全にイタズラするときの顔だよ
だいたい九条先輩がヒロなんかの相手するわけないよ
それに、私とはきっと休日まで一緒にいたくないだろうし…
「じゃあ、もらう」
はい?
ええ!!
固まる私をぐいぐいと引っ張っていく先輩
ヒロもまさか本当に私をつれていくと思ってなかったみたいで、既に遠くなってしまった今も
唖然とこちらを見ている

