「……九条、先輩、話したいことがあって
 最後に聞きたくて」


苦しそうに眉を寄せる先輩

私は拒絶されるかもって思うと、先輩のことを前のように名前では呼べないないけど

勇気を使う所はそこじゃないよね


「先輩は幸せですか」


「…何言ってるのかわかんない」

幸せですか?なんて、自分でも笑えてくる、何様なんだろうって


それに、やっぱり、先輩の声はあの頃と違って冷たい

どうしようもなく逃げたくなる


だけど、

「先輩、私、月野先輩とよりを戻せることが先輩の幸せなんだと思ってたんです、だから、先輩が復縁するそれまでは、私も自分の気持ちを大事にしようって、何度も先輩に告白してました、もしかしたら、振り向いて貰えるんじゃないかって…」


「……」

「だけど、裕先輩に聞いた通り、今の先輩、
 ちっとも幸せそうじゃないから」


初めて、先輩の表情が揺らぐ


その顔は、普段の無気力よりもっと酷く疲れたように見える


「だから」


先輩の手に恐る恐るそっと触れる



「先輩が何を考えてるのか、教えてくれませんか?」


女嫌いなのに、しつこい私が傍にいることを許してくれた先輩


暗い中一人で待っていた私を迎えにきてくれた先輩


私の髪を綺麗だと言ってくれた先輩


本当は優しい先輩が、どうしていきなりあんな風に冷たくなったのか


先輩が、今何を考えてるのか知りたい


私が知ったところで何なんだって思われるかもしれないけど


それでも


「…先輩のこと、好きだからっ」


小さな声で最後にそう呟けば、涙が溢れてしまった