「じゃ、帰ろっか」

しばらく時間が経ったように思える



先輩が私の手を引いて歩き始めたとき







「……羽華?」






「え?」




声のする方を見るとそこには










湊先輩がいたんだ








「湊先輩…」


どうしてここに…


聞こうと思ったけど声にならなかった


だって湊先輩の隣には月野先輩がいたから



「あ!あなたが羽華ちゃん?わ~、可愛い!」


月野先輩は、顔を輝かして近づいてくる

湊先輩と腕を組んで


「はじめまして~、月野春です!よろしくね?」

可愛くにこりと笑う先輩


近くで見ても綺麗な人だなぁ


じゃなくて!


この状況はちょっと…



私の手は樹先輩と繋がったままで


湊先輩と月野先輩は腕を組んでいる状態



や、二人は仮に付き合っていたとして

私は…



「……羽華、泣いた?」



そう言って月野先輩の手を離して私に近づいてくる先輩


そして、そっとふれて私の頬についた涙をぬぐってくれる


ズキンズキン


嫌だな



いつもなら嬉しくて何よりも暖かい先輩の手



だけど、今はさっきまで月野先輩と繋いでたかもしれない、その手が苦しい



今すぐ逃げ出したいっ




「羽華?どした…」



「九条」


先輩が何かを言おうとしたとき、樹先輩が私の頬に触れたままだった、先輩の手を振り払って



「仮にも九条のこと好きなやつに対して、この状況、辛いとか、考えてやらねーのか」


怒ってそう言ってくれる樹先輩


湊先輩は、はっとした顔をして私の顔を見る



「羽華…俺、」


な、何て言われるのか、ぎゅっと目をつぶった


湊先輩は…







「……っごめん」




ズキンッ





今までも告白は何度も断られてきた


けど



今のごめんは、一番辛かった

ねえ、何にたいしてのごめんなの?

月野先輩といたこと?

私の想いに対するごめん?



「な、なんで謝るんですか?先輩はなにも悪くないですよ?」



グッと、聞きたい気持ちを堪えて笑う


笑え



私っ





「っ!羽華、俺はっ」




湊先輩が、いきなり大きな声を出したと思って
驚いていたら


「湊」



それを納めるように月野先輩が遮る



やだな


それで黙ってしまう湊先輩を見るのも嫌だ



帰りたい




「じゃあ、失礼しますっ」



私は樹先輩の声を後ろに聞きながら、走り出したんだ