「あ、れ、もうこんなところまで…」

「羽華」


「先輩、ごめんなさい私ボーッとしちゃってて、もう大丈夫なんで、ありがとうございました!」


笑おう


いくらなんでも、これ以上迷惑はかけられない


仮にも、私のことを好きでいてくれる人に対して、失礼だよ


「じゃあ、また部活で!」


帰ろうと、先輩に背を向けた時




「笑うなよ」




「え?」




今の低い声、樹先輩?
いつもとは違う声色に驚いて足が止まる


「無理して笑うなって、言ってんの、そんな苦しそうな笑うなら…」


「……先輩だって、同じじゃないですか、
 私のこともう、忘れてくださいっ、だって
 私、さっきの光景を見ても、まだ、湊先輩
 のことっ」


「……俺は、いいんだよ」

先輩は、私の手をぎゅっとにぎって

話してくれる


「や、良くはないんだけど、なんつーか、
 今だってあわよくば、俺のこと好きになれ
 ばいいって思ってるけどさ」

そんな風に思ってくれてるって思うだけで苦しくなる

だって私が好きなのは湊先輩でこれからも、それは変わらないから

きっと、何度苦しい思いをしても


「だけどさ、俺が好きになったのは、そんな
 風に悲しい顔して笑う羽華じゃないから」

そう言って、先輩も悲しそうに笑う

「樹先輩っ、ごめんなさいっごめんなさい…」

「まだ、諦めないけどね?」

今度は明るく笑う先輩

私は自分のことばかりで先輩のことを苦しめ
てしまってるよ