廊下を歩いてしばらくすれば、授業が始まったのか、辺りは静かになった
見回りの先生に会わないように、こそこそと目的の場所を目指す
まっすぐ旧校舎に繋がる廊下を渡り、古びた美術室のドアに向かう
ポツンと正面に見えるドアにそっと近づく
ガラガラッ
「先輩、いますかー?」
「……いない」
「いるじゃないですか」
少し間があって、気だるそうな声が奥から聞こえてきた
少し暑い美術室、でも窓を開けてしまうと、人がいるとばれてしまうので、窓は開けられない
九条先輩は、窓際のそばに横になっていた
腕を枕にしながら横を向き、太陽に照らされて少し眩しそうに目を細めてこちらを見ている
いや、睨んでいるの間違いかな
そんな姿も様になる
「ふふんっ!私、先輩の時間割は全部、把握してるんですよ」
先輩の近くに座りながらそう言うと
「俺は君の珍行動に驚かなくなってきてて、変態に近付いてるみたいで悲しいんだけど」
そう言いながら私から距離をとるように、寝返りをうって反対側を向いてしまった
「考え方が似てきてるってことですか?
好きになってくれる前兆かもですね!」
「………」
大きなため息が聞こえた後、何も喋らなくなってしまった

