何度でも君に好きが届くその瞬間まで


────


賑わっていた場所から離れる


さっきまで込み合っていたはずの旧校舎前も、今はすでに誰もいなかった


「……先輩がモデルなのバレちゃいましたか?」

「だって、こんな風に俺のこと描けるのは羽華だけだよ」


私の絵の前


以外にも先輩は、私の絵を発見してくれてたみたいで


今は優しい目で私の絵を眺めてくれていた


「どうしても、先輩を描きたかった」

「どうして?」


こんなこと言ったら、また引かれそうだけど


真っ直ぐに私をみてくる瞳は暗くなりつつある廊下でもキラキラと光って見えた


その視線から目をそらし、絵を見て、絵の中の先輩を見て答えた


「閉じ込めたかったんです」


大好きな先輩を


私だけの先輩にしたかった


「いっそのこと絵の中に閉じ込めてしまいたかった………それで、私のこと好きになってくれるまで誰にも会わせない……」

「……」

「冗談ですよ」


口をひきつらせて目を細め始めた先輩に反論する


閉じ込めたかったのも本当

でも、一番の理由は、


「秘密です」


「……そっか」


以外にも深くは追及してこなかった先輩


だって、だって


言えないよ


言いたくなかったの



先輩に、本当のことを言わない変わりに絵の中に先輩を描いて想いを込めた


──いつか、思い出してくれたらって


あの日の事を


先輩を好きになったあの瞬間を



あの日を重ねて描いた絵



誰になにを言われても私の最高傑作になった


たくさんの人に見て貰えて、しかも、先輩にまで見て貰えて、もう、充分、幸せ………






「一番に見せてって言ったのに」









「はい……?」




あなたって人はなんでいつもいきなりなんですか?


先輩の言葉を頭でリピートすれば、開いたままの私の口を閉じるように先輩の両手が私の頬を包んだ



「太陽みたいな髪も」



そう言って右手を頬に手を添えたまま、今度は私の髪を優しく撫でた


「そのしつこい視線も」


私のおでこに先輩のおでこがくっついて近距離で先輩の瞳が揺れた


「なんにも変わってなかったのに」


「せ、先輩…」

「気づかなくてごめん」



長い睫を伏せて、私の頭の後ろで手を組んだ



「ずっと側にいてくれてありがとう」



低くて深い優しい声は私の鼓膜を優しく揺すぶった



あぁ、なんて幸せなんだろう



近距離で重なった視線は、ドキドキもしたけれど、なぜかほっとして暖かい涙が一筋こぼれてしまった



ねぇ、先輩。私こそ、



「好きです、あの日から湊先輩しか想えないんです……」



ありがとう


あの日、私に出会ってくれて


あんな、素敵な言葉を送ってくれて



私の世界を輝かせてくれて





私の頭に回されていた手を取って、両手で握る

そうやって溢れて止まらない笑顔で先輩を見れば、「羽華には敵わないな」って、少し困ったように笑うから


どうしようもなく抱きつきたくなった



だけど、




「羽華」


今度は先輩が私の手を両手で包み込んで、名前を呼ぶから


なんですか?と笑えば、先輩も優しく、今までにない笑顔で言ってくれた言葉




「好きだよ」






私はこの瞬間を絶対忘れない


離ればなれになっても、生まれ変わっても、おじいさんおばあさんになっても



湊先輩の柔らかい笑顔


その表情が崩れたのは、



もちろん



「うううううっ!!!」


「え、なに」


「せんぱああああいっっ」


「うぐっ」



思い切りダイブして先輩の首もとに抱きつけばよろめきながらも抱き止めてくれた


好き

大好き



たくさん泣いた



苦しかった



でもね?その分、今この瞬間がとてつもなく幸せなんだよ


ねぇ、先輩



「大好きです!」


「うん、俺も」


同じ気持ちを返してくれる声も


同じ様に幸せそうに笑っている顔も


全部が愛おしい