ねえ、先輩



もし勘違いしてもいいなら



もし、まだ先輩の隣にいることを許して貰えるなら



あなたをまだ、呼んでいいのなら



私を必要としてくれるなら





「湊先輩っ」








「遅いよ」





驚いた表情でその瞳で私を視界に捉えたかとおもったら


呼んだのは先輩なのに、生意気なこと言って、いつものように意地悪に、それでも柔らかく微笑むし、微笑んでくるし!!




「おいで」



しかも!手招きなんてしてくれるからっ




飛び込むしかなくなっちゃったよ



「…やっと捕まえた」


「……こっちのセリフです」


思い切りステージの上に上がってしまいには、大勢の観客の前でダイブして先輩に抱きついたのにしっかりと抱き締めてくれた


暖かい先輩の腕の中に収まる


頬を膨らませて先輩の腕の中から見上げれば、楽しそうに笑ってるからキュンとくるじゃないか!


「どこにいたの?」

「誰かさんが浮気してたので、失恋ヒロインは、シクシク階段下で泣き寝入りしてました」

「ヒロインが見当たらないけど?」


憎まれ口を叩きながらも、私の言葉、私の腫れているであろう目を見ると苦しそうに顔を歪めてしまった


「先輩、大胆ですね」

「うん、会いたくて仕方なくなっちゃったから
ね」

「え!?」

「なのに誰かさん、勘違いして勝手に泣き寝入りなんかしてるし、連絡しても出ないし」


先輩の甘々な言葉に目が回る


な、何が起きて??


勘違い?それって、紗夜さんのこと?


というか…


自分のおめでたい予想を確かめるべく先輩を問い詰める


「先輩、あの、それって」

「……うん、でもここでは何だかな」

「!?」


ステージの上

ただいま今日一のイベント開催中


たくさんの生徒


一般の来賓の方こそ少なくなったものの、まだまだ盛り上がっている学校祭


当然、周りの視線が刺さりまくってる訳で


みんな私達の次のやり取りを目をキラキラさせながら見守ってくれていた


「…いーじゃないですかっ!!私もう、興奮が抑えられませんけど!?」

「……イヤだ」

「てっ、照れるなここでっ!!」

こんな大衆の前でデレ顔をさらさないで!

耳まで赤くして、珍しく照れている先輩


その顔ときたら


「みっ、見るなああああっ!!」

「ちょ、羽華うるさい」


先輩の前に立ちはだかって手をブンブンさせて貴重なデレ顔を生徒たちのカメラの嵐から守る


わ、私でさえ!ようやく、拝見できたのにっ


「ほら、行くよ」


「わっ、わわ!」


暴れまわる私の手を引くと、私の指に先輩の指がからめられて、強く握られた


いつもは、平熱が低い先輩の冷たい手は


今はとても熱くて


まだ赤く染まっている耳が、私の気持ちをさらに高めた