「せ、んぱ」




君の細い声を聞いたのは


「…!!、羽華…?」

「……蜂蜜ちゃん?」

こいつ………知っててこんな事したな

……ムカつく


羽華が見てるってわかってる癖に未だに離れずくっついてくる紗夜

わざとらしい




それよりも、


ドアの前に立ったまま、こちらを見て固まってしまっている羽華


俺の腕は紗夜の頭に回ってて、見るからに良くない状況

……ホント、最悪


どうやって説明すれば、羽華をこれ以上傷つけずに済むのか考えていた


けど、


誰よりも先に冷静になったのは羽華だった


「……先輩、おめでとうございます!」

「…は?」

………いや、は?じゃないよな

は?って言いたいのは羽華だよね

なのに……てか、おめでとうって何?

この状況のどの辺がおめでとうな訳?

冷静に見えて冷静じゃない


何か羽華に伝えればいいのに、思考はフル稼働してる癖に声にはでない

そんな間にも羽華は急ぐように言葉を続けた


「私ね、決めてたんです。先輩に無視されても、呆れられても、ずっと好きっていい続けようって、先輩が誰かに真っ直ぐに想われてるんだって知っててほしかったから」


羽華は、何を言ってる?

まるで、最後みたいに

一語一語、大切に喋る


そして、俯いた



泣いてる?



そう思って手を伸ばそうとした時、




「けど、それも今日で卒業しようと思います!」



思い切り顔を上げた羽華は、笑顔だった


あぁ、……違う、違うよね


よく見ると、目は赤くなってるし、目の縁には今にも溢れそうな涙が溜まったいた



全然、笑顔なんかじゃなかった



それでも、我慢するように、息を飲み込んで言葉を続けた


「湊先輩、私、先輩の幸せを見れてよかった!先輩が本当に想い会える人に会えてよかった……」


よくない

俺は羽華がいいよ


羽華以外に心を埋めてくれるものなんか無いから

だから、そんな風に言わないで欲しい

何度も伝えてくれていた

何度、好きって言ってくれたんだろう



次に聞いたのは、




まるで、



本当の告白のように、一度きりの





「これだけは、覚えておいてくださいっ!こんなにも先輩を好きな、バカなストーカー女がいたこと!…………あとね、?


           ………大好きでした」



掠れて、震えた声

それでも、しっかりと俺には聞こえた


溢れ落ちそうな涙を最後までこぼさずに羽華は笑った



……てか、大好きでしたってなに?


でしたなの?過去なわけ?