目の前で笑う紗夜は、何一つ変わらない


胡散臭い笑顔で、俺にスマホを返してきた


「これ、蜂蜜ちゃんに連絡しよーとしてたでしょ?やっぱり付き合ってる感じ?」

「……何で、ここにいるってわかった?」

「えっとね?フラフラ歩いてる湊くんを見つけて、二人で話したいし、ちょーどいいやってついてきちゃったぁ」

相変わらず語尾が伸びていて癪に触る喋り方

こればっかりは、何度注意しても直らなかった


てか、ついてくんなよ


「ほら、連絡した方がいいんじゃない?蜂蜜ちゃん、待ってるかもよ?」

「……そうだね」

ごめん、羽華

こいつと話し終わったら、会いに行くから

それまで、


待っててほしい





【ごめん、会えなくなった。】






思えば、待たせてばっかりだ

どれだけ羽華の、時間を貰ったんだろ


どれだけ、俺を想ってくれてたんだろう

気づいたばかりの俺は、羽華と同じ大きさの想いを返せるのかな

変態ストーカーには、敵わないか

「なんか、楽しそうだね」


紗夜を連れて、絶対に人の来ない、俺の昼寝スポット、旧校舎に来た