ううっ、暑苦しいっ!

炎天下の空の下、気温こそ下がったもののこんなにも人がごった返していたら気温なんて関係なく暑苦しい!

準備に追われ、人の波に飲まれないよう息抜きに空を見た

あ、あ!!

「湊先輩!!!」

先輩の教室のあたり

執事の格好からいつもの制服姿に戻った先輩がこちらを見ていた気がして大きく手を振った

「!」

「んん?、先輩!羽華ですよっ」

私がまた手を振ると、勢いよく窓枠から離れてあっという間に見えなくなってしまった

ええええっ

なぜ!?いつもなら手ぐらい振り返してくれるのに!

というか、心なしか頬が赤く見えたような?

た、大変だっ熱かもしれない!

先輩ってイベントの日に限って熱だすタイプの人間っぽいし…

「行かなくては!」

「どこにかな?」

「ひいいいいっ!」

走り出そうとした私の肩を掴んだのは菜留さん

こ、怖い!

さっきの放送ジャックをしてから、私を離してくれない菜留

「き、聞いて欲しい!」

「むん、…よし、聞いてあげよう」

私が手を空高く上げて頼めば、腕を組んでうんうんと頷きながら話を聞いてくれた菜留

「て、事なんでちょっとお見舞いに!」

「なんだって?行かせねーよ?」

黒い笑みを浮かべて私の腕を掴んだ菜留に抱きつく

「お願いいたしますうう!先輩に会えなさすぎてほんと、もう、げぼりそう!」

「まあ、ゲボられるのは困るな」

よしよしと私の頭を撫でてくれた菜留

そして、

「神楽坂ああ!!羽華の、」

「羽華!?なに、なんだって!」


大きな野太い声で叫んだ菜留に答えるように、洸くんが光の速さでどこからか走ってきた

「羽華!やっと見つけた!!ねえあっち行ってみよー?なんか、試食会やってるんだってさ」

「え、行きたい…」

「…あんた、先輩は?」
「はっ!!」

「もう……、はい、これ買い出しメモね。さっきから使い物にならない神楽坂と行ってきて?」

「な、菜留さん、それはっ!」

「まあ、少しくらい?寄り道してもいいよ」

そう言って笑って私の頭を撫でてくれた菜留にぎゅっと抱きつく

「洸くん、行こ!」

「え、行くいくー」

「羽華!すこし、だからね!早くね!」

菜留の焦った声を遠くに聞きながら裏庭を抜けた