「……いや、何で泣く?」
「ぶふっ先輩いいい」
私の泣きべそを見て、クツクツと笑う先輩に少しホッとする
こんなに優しく笑う先輩が冷酷なわけないのに
私の涙をセーターの袖でゴシゴシと拭う先輩
大きな手のひらで私の頭をそっと抑えて、溢れてくる涙を何度も拭いてくれた
「ううっ、先輩」
「ベショベショだ」
「買い取りますねええ」
「…いや、非売品」
おでこを人差し指でつついて、笑う先輩
確かに高校で再会して、初めて告白した時の先輩の態度は恐ろしく冷たかった
でもね?
今はこんなにも優しく笑ってくれる
「先輩!!」
「ん、なに?」
首を傾げてこちらを見てくれる
「先輩が私の事を視界にいれてくれるだけで私は幸せだけど、紗夜さんはきっとそれだけじゃ足りなかったんだと思うんです。
幸せの感じ方は人それぞれだと思うから…
受け取りかたも伝え方も
先輩は、ぜんぜん冷たい人なんかじゃないです
だってこんなにもしつこい私を何度も受け止めてくれる
こんな優しく笑う先輩が冷たいわけないっ!!
人を幸せに出来ないはずがない!
先輩が幸せになれない訳がないっ、私が!先輩を幸せにします!!」
溜め込んだ感情を吐き出すと先輩は、驚いた顔をして、また微笑んでくれた
「…幸せにしてくれるの?」
「はい!!」
「じゃあまず、ストーカー止めて貰おうかな」
「そ、それは、私の本職なんで!」
「ろくな仕事じゃないね」
先輩、大好きです
今はまだ、先輩が納得できないなら
誰かを好きになったり、想ったりしなくていいと思うんです
でもね?
どうか自分を責めないで?
幸せになっちゃいけないなんて思わないで
だってね?
「私は先輩を想ってるとき、本当に幸せだから……先輩、先輩もいつか、きっとわかります、裕先輩の言葉の意味も、少しずつ」
「……そっか、そうだといいな」
「はい!」
「じゃあ、羽華はこの事に関しては先輩な訳だ?」
「はっ!そうなりますね!何でも言ってください!」
「んー?……じゃあちょっとだけ」
おもわず正座した私の太ももの上にコロンっと寝ころがると静かに瞳を閉じた先輩
柔らかな黒髪にそっと触れて呟く
「好きです、先輩……先輩は幸せになれます、絶対に」
寝たのか寝てないのか
いつもの無視を決め込んだ先輩から、返事は聞こえなかったけど
不思議と心は暖かった