「うん、俺が悪かったよ」

「湊!」

裕が今度は俺に掴みかかるが、それを無視して紗夜に話しかける

「けど、付き合ってた相手をそんな風に悪く言う紗夜の神経も信じられない。だいたい不満なら俺に直接言ってくれれば良かったのに。……俺は、何があってももう紗夜とは居られない」

「……もう、いいや」

「…うん、じゃあね」

大人しくなった紗夜

不満げな裕を連れてその場から離れた

最後に聞こえた、紗夜の声がずっと、今でも耳から離れない


「湊くんは、幸せになれない、絶対

  人の感情もわからない人間なんだからっ」


うん、そうかも

俺はもう振り返らなかった



いつも乗るバスを乗り過ごした俺達はバス停のベンチに腰かけて座った

疲れた

隣の裕も自販機で買ったコーラを飲んで、通りすぎていく車をボーッと眺めていた


「結局、あいつの周りにいた男達は何だったんだろーな?出番無しって感じだったね?」

「そうだね」

裕の軽い口調が胸に染み込む

裕は、優しい

俺の側に居てくれた唯一の同級生

「裕」

「ん?」

だから、さ

俺がもう誰かを傷つけないように

誰かを好きにならないように

見ててよ


付き合ったって何にもいいことなんてなかった

自分がどれだけ自分勝手で、冷たい奴かわかっただけ

見た目だけの冷酷な

ただ、苦しいだけ

それなら、


「もう、誰も好きにならない」


裕は悲しそうに笑って、空を見た

てっきり怒るかと思ったから驚いた


けど、


「それはきっと無理だね」


裕は俺を軽く小突くと笑った

何が無理なのか、どこからそんな自信が沸くのか俺にはわからなかった

「湊は冷たい人間なんかじゃない」

「…そう」

「うん、ただの恋愛初心者ちんだもんね?」

「裕は達人だよね」

「もうっ!湊は俺のことわかってないなあ!」

その日から、裕意外と関わることをやめた


~湊side 終~