ガシッと手首を掴まれて、ついでに頭も鷲掴みにされる

「う、羽華!」

洸くんの焦った声

同時に聞こえたのは、裕先輩の笑いを堪えた声、そして、


大きな旗に徹夜で書いた言葉……

それは、


「ねえ、誰が “メンヘラ製造機” だって?」

ああ、愛しの先輩

「今日も今日とて麗しい姿を見れて私は感動しております…うぐっ!!」

「今すぐその旗、燃やせ」

「ええええ!昨日徹夜で作ったんですよ!!」

「…人の人格疑われるような物製造して楽しかった?」

「ひいいん、…家で保管します」

「…燃やして」

私の頬を両手で包み、いや言い方が優しかった、両手で鷲掴みにして、何度も燃やせと催促してくる湊先輩

「おまっ!羽華に触んなっ、ぐふっ」

「洸もなんで手伝ってるのかな?」

「はん!お前のそーゆー顔が見たかったからだよっ!!ぶふっ」

「ふーん、…この童顔どうしてくれようかな」

「はなしぇやあああっ!!」

怒りの矛先が洸くんに向いてしまった…

ごめん、洸くん…犠牲になってくれ…

顔を撫でくり回されている洸くんを横目に旗を畳む

結構上出来だったんだけどなあ?

やっぱり言葉のチョイスかな?


旗には大きな字で、

“メンヘラ製造機でも愛してる”と書いた

生徒の感想は、

『それでこそのあの冷たい目なのね、、』

『俺も九条に冷たくされたい…』

『踏まれたいいい』

など、様々

「先輩、良かったですね、男子生徒のファンも出来ましたよ」

「…もう、ただしんどい」

近くにあったベンチに腰を下ろして溜め息をつく先輩

「じゃ、やり直しますね先輩、おはようございます、好きです!」

「生まれてくる瞬間からやり直した方がいいと思う」

「えへへ」

「誉めてない」

グーで軽く小突かれた

項垂れた先輩の横に座って旗を畳んで先輩の鞄にこっそり詰めようとしてたら、裕先輩が私の隣に腰を下ろして言った

「それで?メンヘラって言葉はどこからきたのかな?」

「え?あー、えっと」

書いたはいいけど、これは聞いてもいいものか…

湊先輩も意味がわからないのか、キョトンとした顔でこちらを見ていた

か、かわいい!

少し伸びた前髪の隙間からこちらを覗く、大きな整った目

「か、可愛いからあんまりこっち見ないでくださいっ!!」

「何言ってる……」

「ぼ、母性がくすぐられるうう」

「…キモい」

そう言いながらもクスクスと笑っている

かー可愛い、もーかわい



…パシャ


「あ、やば」

「…」

反射で撮ったものだから、シャッター音がなってしまった

いつもの冷たい表情で私のスマホをガン見している先輩

「隠し撮りはいかがなものかと…」

隣の裕先輩も引いたようすでこちらを見ている

「あ、あは、久しぶりの笑顔だったのでえ…」

「…羽華が一番のメンヘラだね」

「いや、私はストーカーです」

「…もう無理、ホント無理、帰る」

「いやああああ!先輩いいい」

スタスタと出口に向かって歩いていく先輩の腕にしがみついたけれど、細腕の癖に強い力に私は引きずられ、仕舞いには、、

「!!」

「はい、お別れ言って」

「え、え?先輩?」

ピッ、ピ

「湊先輩いいい!!」

「ばいばい」

私のスマホを取り上げた先輩は、私のスマホの写真データを全て消すと屋上から出ていった

「ああ…全部消えてる」

「羽華ー、元気出して?俺の写真撮りなよ、ね?」

「あー、先輩、せっかく作ったのに置いていってるしー」

「羽華、最近俺の事無視するよね」

先輩が置いていったメンヘラの旗を持ってまた座り直す

やはり渋とし!湊先輩!

「それで?何でこんな物騒な呪物作ったの?」

「裕先輩…まだいたんですね」

「羽華ちゃん……うん、いるよ?」

てっきりいつもみたいに湊先輩に引きずられて帰ったかと思ったよ

しくしくしている裕先輩を横目に合同授業のことを思い出す