何度でも君に好きが届くその瞬間まで


懐かしい、昔の話をしてくれた洸くん

その間ずっと手が握られたままだったけど、離すことなんて出来なかった

なんだか、話してるときの表情が暖かくて、柔らかくて、どれだけ大切な思い出にしてくれてたのか伝わってきたから

話し終わった時

なんだか、和やかムードに…

「あまーーーーーい」

ならなかった

椅子にふんぞりがえって座りながら冷たい視線の菜留

「なんだよー、ちゃんと告白しなよねー、告り逃げだよ!げえっ」

菜留が甘い甘いと言いながら、取ってきていたポテトサラダを頬張っている

「確かに洸は、ロマンチックだねえ、花冠作るなんて、俺はキュンときたよ!!」

「裕に言われても嬉しくねーしっ!」

「…いいと思う」

「ぐっ!!九条まで!珍しく喋ったと思ったら、誉めてんじゃねーよ!」

二人に威嚇している洸くん

裕先輩に至ってはよしよし洸くんの頭を撫でてるし

意外と男子陣は乙女なんだねえ

皆どこかバカにしている雰囲気だけどね?

でも、でもね?


「嬉しかったよ」

「…ん?」

「あの後、洸くんすぐに居なくなっちゃったでしょう?……悲しくて、置いてけぼりにされた気持ちになったの……でもね?あの花冠のお陰で、いつでも洸くんのことを思い出せたし、洸くんはちゃんといたんだなって思えたから」

花冠は、今は当然枯れてしまったし、今、話してくれるまで遠い記憶になってしまっていたけれど、

「洸くんは、ずっと覚えててくれたんだね、……ありがとう、また会いに来てくれて」

「っ羽華!!」

ガバッと抱きつかれて、椅子ごと後ろに倒れこみそうになる

私の後ろに座っていた菜留が慌てながら、洸くんを冷たい目で見つめつつ支えてくれた

それに気づかない洸くんは、私の頬にスリスリと顔を寄せながら嬉しそうにはしゃいでいる

「もう、このまま俺と羽華のハッピーエンドで終わってもいいんじゃない?」

「いや、それは大丈夫!私には湊先輩が……」
「終わっていいと思う」

私に抱きついたままの洸くんを剥がしながら、湊先輩があえて私の言葉に被せるようにしてそう言った

「先輩、そんなこと言って!もう……、」

「なに?」

「照れてるんですね!喜んじゃってー」

「…もう、怖いんだけど」

ああ、今日も今日とて冷たい視線

半分諦めの気もちで、先輩に笑顔を向けて冷たい視線に答えていると、一度私から先輩によって離された洸くんがテケテケと戻ってきた

「なんだよー、そんなに羽華に冷たくしてさ!かまってもらってる癖にさ!羨ましい限りだぜ!」

「いや、俺は毎回全力でねじ伏せてるつもりなんだけど」

「先輩、私のことなんだと思って…」

「新種のストーカー生物」

「うぅっ!即答っ」

隣で苦しむ私のことなんて気にしない様子で、大きなあくびをかました先輩

いいけど、いいけれども!!

今度は私が先輩にすり寄って、泣いていたら

「ん?じゃあ、九条は結局妬いてなかったんだ?」

「いやいやいや!!妬いてたね、あれは」

「ほんと、裕、そろそろ黙って」

私をひっぺがして、次は裕先輩に冷たい視線を向けた湊先輩

なんか、湊先輩いい匂いした……

いじめられている裕先輩を眺めながらそんなことを考えていたら…

「じゃあ、じゃあやっぱり羽華は俺が貰ってもいーよな?」

隣にいた洸くんが湊先輩に顔をくっつけて牽制し始めた

何を、言い出すの…

ムッとした表情を浮かべ洸くんから顔を反らす先輩

洸くんは逆にニンマリと笑って

「あっそ、じゃ、もーらいっ」


引き寄せられた体

目の前には、いつかの日と変わらない長く綺麗な色素の薄い茶色の睫毛

触れた体温


「…な、な!!神楽坂ああ!!」

菜留の叫び声

離れた洸くんはとても嬉しそうに笑っていて、隣を見れば珍しく目を見開いて立っている湊先輩

裕先輩に至っては、顔面蒼白

「何でそーなった!?」

と、叫んでこちらに近づいてきて、私と洸くんを交互に見てる

わ、私も聞きたい…

「ちょ、羽華!?大丈夫??」

菜留が走って寄ってきてくれた

「だ、大丈夫」

だけど……

「だって、これが初めてじゃないしね!ねー、羽華!」

「あんたは、沼に沈め」

それは、それは恐ろしい声で洸くんを突き飛ばす菜留

そこに裕先輩が

「いい?洸、もっと順番ってものがあってね?ムードとか…」

男の定義を語りだした

私を置いてけぼりに、騒がしくなり始めた三人

チラリと湊先輩の方を見ればいつも通りの無表情に戻ってた

ああ、やっぱり先輩はなんとも思わないんだなあ

もしかしたら、私が他の誰かと付き合い初めてもきっと先輩は何も思わないし、変わらないんだろう

ねえ、先輩

私はもし

先輩が他の誰かとって考えるだけで苦しいよ

そんなことを思っても仕方ないのはわかってる

先輩は、私のことをなんとも思ってない

わかってた

「…羽華?」

菜留の声に意識が戻る

いつの間にか洸くんも裕先輩もこちらを見ていて、…湊先輩を除いて

声もかけてくれないんですか

目も合わせてくれないんですか?


少しも、気にかけてくれないんですか?


「んーん、何でもないよ?」

「や、でも」
「洸くん、次したら唇削ぎ落とすからね?」

「羽華やっぱり怒ってる??ごめんねっ、次は許可貰ってからにするから!!怒んないでっ」

「だから洸、時には強引に……」

洸くんは裕先輩を無視して私に駆け寄ってきてくれた

本気で謝ってきてくれたから、思わず笑ってしまう

洸くんの、好きは伝わるよ

でも、湊先輩のことは、よくわかんなくなっちゃった

いや、もともと謎だけど

「えっと、朝ごはんまだだったね?何食べよーかなあ」

「羽華!こっちにパンのバイキングあるよ!」

洸くんが走って行ったので私もそれに着いていく

先輩は、悪くない

私が勝手にモヤモヤしてるだけだから

だから、このモヤモヤがなくなるまで先輩に近づくのは止めとこ

先輩達とは離れて座って、後から追い付いた菜留にウエットティッシュで唇をごしごし拭かれて、朝ごはんは終わった