「何か先輩、顔色悪くないですか?」
何となくいつもより無気力感が増してる気が
チラッとこちらに視線をよこして、すぐに遠くを見る先輩
「別に」
「いやいや、そーなんだよ!昨日の事が気になってるらしくて夜何回も起きてたんだよ、湊っっ!?」
「裕、うるさい」
昨日の事?
頭を後ろからぐっと押されて転びそうになっている裕先輩
昨日って…
「あ、間接キスのことか?」
今まで湊先輩に裕先輩がいじめられてる所を笑っていた洸君がはっとしたように湊先輩に詰め寄る
無表情に私に視線を送る先輩
言ったな?とでもいうかのようにこちらを見てくる
「あは、記念すべきにですからね……」
「…はあ」
いや、何か今日先輩と会話という会話してないんですが…溜め息と一言だけ
シュンとしていたら近づいてきた湊先輩に両手で頬を摘ままれる
「お喋り」
「すみまふぇん」
頬を弄くられながら先輩の顔を見ると、やっぱり顔色が優れない様子
「でも、何で寝付けなかったんですか?」
「……」
ピタリと手を止めて真顔でこちらを見つめる先輩は、どこか不機嫌そう
え、なに私のせい?
それは申し訳ないっ、先輩の美貌を脅かすなんて、あってはならない!
「先輩っ、老け顔がもっと老けちゃいますっ」
「なに、いじめられたいの?」
アワアワと先輩の手を掴んで謝っていたら、コソコソと裕先輩が近づいてきた
ちょいちょいと肩を叩かれて、何故かニヤニヤしながら耳を貸してっと言われたので顔を近づける
「湊、昨日最後に羽華ちゃんが言ってた間接キスじゃない方の初めての人、気になって寝れなかったんだよ」
え、、
「え?」
「事実、俺を信じなさい」
自慢気な裕先輩を見て、隣にいる湊先輩を見る
不機嫌を顔全体で表している先輩
いや、これは
「嘘ですね、裕先輩、私を喜ばせるためにこんな嘘を…」
「えっ、いやいや、嘘じゃないからっ!ちょっと湊?!何だよその顔はっ昨日の乙女な顔はどこにっ」
「乙女してないから、裕うるさい」
「えええっ」
冷たい視線を浴びせられて悲しんでる裕先輩
でも、実際どうなんだろう?
もし、もし湊先輩が私の事を考えてて寝れなくなってたなら……
「湊先輩」
「?」
「正直、正直どうなんですかっ!」
「だから、正直もなにも昨日本人がそう言ってたんだって」
「裕先輩じゃなくて湊先輩に聞きたいんです!私の事を考えて興奮してたとか、してたとか」
「いや、してないから」
「本当に?ホントに?」
「本当に」
ううっ、引き下がってくれない
裕先輩の必死ぶりから本当かと思ったんだけどなあ
ついに腕を組んでそっぽを向いてしまった先輩
諦めない私と冷たい先輩、その間にヒョコっと洸君が入ってくる
「洸君?」
私の顔を横から覗き込んでぐっと洸側に引き寄せられて体が傾く
洸君の何故か得意気な顔
あれ、何か嫌な予感が…
そのキラキラした横顔をじっと見つめる
そして、
「俺だよ、羽華の初キスもらったの」
え、、
肩に回された洸君の手
珍しく少し驚いた様子の先輩
いや、そんなことないなあ
いや、じゃなくてっ
「そ、そうだっけ?」
「うん、え、覚えてないの?」
心底驚いた様子の洸君に私も驚く
うーん、だって本人の記憶にないんだよ?
本気でわからない私を見て、だんだんと顔が青ざめていく洸君
「なに、洸の妄想?え、夢?」
哀れんだ目で洸君を見ている裕先輩
菜留はお腹を抱えて笑っている
「なっ?本当だって……え、だよな?」
「えっと、ごめんね?」
「えっ、えええ!ちょっと待って思い出そう!ね?」
ギュッと私を抱き締めてから、顔を覗き込んでくれる
そう言って、洸君が話してくれたのは懐かしいあの日のこと
小学五年生の洸君と最後に会った日だった

