「ふふ、そんなことで怒ってる先輩はまだまだ小学生ですね!」

「…ふーん」

パッと私から少し離れて近距離で目が合う
黒い綺麗な瞳と目が合う

眠いからか、トロンッとした目は何だか少し色っぽい

「先輩?、離れて…」

「小学生はこんなことしないんじゃない?」

ニヤリと口元が笑ったと思えば、ギシッとベッドが軋む音がする

耳に綺麗な唇が優しく触れて、吐息がかかる
何度も優しく触れて最後にカリッと噛まれる

「うぅ、やぁっ…」

「ダメ」

無表情で迫ってくるけど、私はそんな余裕ないです!

こんなことは、これが初めてじゃないけど!
柔らかいサラサラとした髪から香る甘い香りにクラクラする

首もとに柔らかな感覚が移り、優しく触れられる、途中ぶつかる視線にドキっとする

背中に腕が回されてスルリと熱い手が肌に直に触れたのがわかる

スーッと指でなぞられて背中がゾクゾクする

「ん、やっ」

声が出るのも恥ずかしくて背中を向けて布団に顔を埋める

けれど、腕を捕まれて起き上がらされて、向かい合う形で先輩の腕の中に閉じ込められる

腰に回された手、片方の手でスッと頬をなぞられる

そのまま、手は私の頭の後ろに回りぐっと先輩との距離が縮まる

綺麗な瞳に写った自分の顔を見てまた、恥ずかしくなって顔を反らす

「…逃げない」
ムスッとした声が耳元で聞こえたかと思えば、頬に熱い唇が触れた

あー、もう限界です、先輩!!

自分でもビックリするぐらい体が熱くて、最後に見えたのは先輩の驚いた顔

「え、羽華?」

先輩の少し呆れた笑みと共に意識はそこで途切れた











▽▽▽

「え、羽華?」

ポスンッと肩に軽い重みがかかる
首筋から伝わった羽華の頬の熱、熱い…

風邪とかの暑さではないし、羽華の事だから興奮して倒れただけだろうから、とりあえず布団に横にさせる

いじめすぎたかな?

まあ、さんざん部屋に押し掛けといて何もないとは思ってないよな?……思ってるか、バカだもんね

スゥスゥと気持ち良さそうに寝ている羽華のおでこをペシンッと指で軽く弾く

それでも、安心しきって寝ている

危機感……

思わずため息が漏れる

じっとその顔をつい眺めてしまう

蜂蜜色の髪は癖毛だと言っていたウェーブがかかり、白い綺麗な肌に桜色の形の整った唇、おまけに頬もピンクに染まっていて思わず触れたくなる

スッと頬を撫でればくすぐったそうに笑みを浮かべる

髪の毛と同じ様に色素の薄い薄茶色の睫毛は長く綺麗に並んでいる

目を開ければブラウンの瞳がまた楽しそうに俺を見つめるんだろう

……どうして

最近、本当にそう思う

羽華は気づいてないだけでかなりモテている
周りに興味のない俺でも気づくほど

きっと本人が許可すればいつでも彼氏なんて出来るだろうに

なんで、俺なんだ?

初めて羽華と会った時なんてきっとひどい態度を取ったと思う、…あんま覚えてないけど
きっと、すぐ飽きて他の女みたいに離れてく、そう思ってた



しつこい



毎日毎日、飽きずに告白してくる、本当に変なヤツ

女は嫌い

小さい頃から騒がれてたからそれなりに見た目が好まれるのは嫌でも知ってた

見た目だけで近づいて、中身が悪かったり冷たい態度を取ればすぐに離れてく

所詮今まで会ってきた女なんてそんなもん

結局そいつらの好きなんて、その程度

諦めてたんだ、気づかないうちに自然と


“あの日”から


でも、そんな事を忘れるぐらい最近は羽華がしつこい、考える暇を与えてくれないくらい

今までの人たちと羽華は違う、もう、わかってる


でも、



『もう無理なんだあ、なんだろう、飽きた?みたいな…』

『湊くんって結局見た目だけだったね?』


いつまで引きずってんだろうな、自分でも吐き気がする

また同じ事を繰り返すなら、羽華とも今のままでいいんじゃないかって勝手に思う

だけど羽華はまっすぐだから、そんなわがままに付き合わせる訳にはいかない


ぐっとと気づかないうちに手に力が入っていた

その手に暖かい羽華の手が重なる

起きたのか、と思ったけどまだぐっすりと寝ている様子

飾らない表情に気持ちが軽くなる

「…好きってなんだろうな?」

こぼれた言葉


自分で情けなくなってくる

教室から見える羽華と洸の姿

知らないけど、見てたらイライラする

洸が羽華に笑い掛ければ羽華も楽しそうにそれに答える

あー、腹立つ

裕にもきっと気づかれてる

自分だってわかってる

『あんまり、待たせんな?』

裕に風呂上がりに言われた
何が?なんて聞かなくても分かった

でも、まだ

めんどくさい昔の問題に羽華を付き合わせるつもりはないから


「…ごめん」


触れたままだった手をそっと救い上げ指を絡める

今は触れるだけ

そのまま、静かな寝顔の隣に横になった
    


△△△