お風呂に急いで入って、髪の毛を少しちゃんとして、部屋着だって持ってきてるもので一番可愛いものを選んで着てきた

だって今夜は入れてあげる宣言いただいてるからね!……たぶん

携帯の画面で前髪の最終チェックをして、いざ!!

コンコンッ

「先輩、来ましたー!」

ゴトンッッガタン、と何やら騒がしい音が中から聞こえて、『湊っ、来たよって、おい!』と裕先輩の珍しく怒ったような声が僅かに扉の向こうから聞こえた

「えっと……」
やっぱり、今日もダメかな??
湊先輩、寝てるのかな?無理に入るつもりはないから、一声掛けて帰ろうと思って扉に近寄った時、

「羽華ちゃん!入っていいよ!」

「わひゃあっ!!」

いきなり開いた扉、驚いて前のめりにつっかえて笑顔の裕先輩に思い切りぶつかる

「おっと、え、大丈夫?まさか、突進して無理やり入るつもりだったんじゃ……」

「ち、違います!いや、そうしていいなら次からそうしますけど…!」

でも、さすがに宿泊してる部屋のドアを壊すのわなあ、湊先輩の家のドアなら迷いなく壊すかもだけど…

ぶつぶつと自分の世界に入っていた私の頭をポンポンと優しく撫でた裕先輩

そのまま、部屋の奥に入っていったので後から付いていく

おお…さすが学校の王子達のお部屋だ
綺麗に整理されてる!

今日たまたま同じクラスの男子の部屋に忘れ物を届けに行ったけど、その部屋は荒れてたなあ

お掃除もできて、清潔感もあるなんて先輩最高すぎません?

キョロキョロと部屋を見渡しながら歩いていれば、ベッドの上に何やら膨らみが…

「え、これ」

「うん、湊だね」

隣にいる裕先輩を見上げる
いや、そんな笑顔で言われても…
え、寝てるの、本当に?まだ8時過ぎだよ?
就寝早くないですか?どんだけ健康体…

「……小学生」
「あー…、ほら、お昼も話した通り最近課題だらけで寝てなかったんだよ、だからかぐっすり、さっきから起こしてんだけどねー」

そう言いながら湊先輩がいると思われる布団をバッシバッシと叩いている

そこまでしなくても……それにしてもここまでされているのに全然起きる気配がない

疲れているのにこれ以上は可哀想だよね…
残念だけど、今日は帰ろう

「あの、裕先輩今日は、」

「よし、じゃあ後はよろしくするわ羽華ちゃん!」

「はい?!」

近くにあったパーカーを被りじゃーねーと、笑顔で手を振りながらあっという間に部屋から出ていってしまった

おまけにしっかり鍵まで掛けて

えっと、これは……

襲っていいよ、と?


いやいやいやいや!!それは、駄目だろう!
先輩と二人、密室になってしまってついつい妄想が膨らんでしまったよ!

とりあえず深呼吸

くるっと先輩の方を振り返る

寝てるのかな?相変わらず動きはない

そっとベッドに近づいて側にしゃがみ、ゆっくりと布団を少しだけずらす

あ、いた

綺麗なお顔が、まあ気持ち良さそうにスゥスゥと可愛い寝息をたてて寝てる

睫毛なっがあ!肌が綺麗!お風呂上がりだからかいつもの爽やかな香水ではなく、シャンプーの甘い香りがフワッと香る

女子か!!

思わず目をかっぴらいて、呼吸も荒く、眺めていたんだけど…、




「誰が小学生なの?」





グイッ





気づけば布団の中

私の体に被さるようにして乗っかっているのは、無表情にこちらを見下ろしている湊先輩

先輩がここで、寝ていたからか布団の中はポカポカと暖かい

というか、


「寝てないじゃないですか!」

「…うん、誰かさんが俺のこと、小学生って言ってた辺りから起きてたかな?」

いいながら綺麗なお顔が近づいてきて、上から抱き締められる形で私の首もとに顔を埋めた

いつもより距離が近くて先輩の匂いに包まれて心臓がうるさい