羽華ちゃんと洸が仲良く帰って行くのを見届けた後、あからさまに機嫌の悪い湊を振り返る

「王子は、ご機嫌斜めな感じ?」

「何が」

何って…そんな顔して自分で気づいてないとか…恋愛初心者すぎて、手に負えないんだけど?

まあ、湊の事はよく分かってるつもりだから何でこんなに自分の事に疎いのかも分かってやってるつもりではいる

“紗夜”

未だにこの名前を出すと湊は苦い顔をする
ほんと、もうさっさと忘れちゃえばいいのに

あんなに湊の事を想ってくれてる人がいるのにね?

幼馴染みだという、洸と羽華ちゃん

だからか今も、気にせず普通に仲良く手を繋ぎながら帰っていったけど、こちらとしては美男美女が仲良く散歩デートしてるようにしか見えないよなあ

湊もきっとそう、同じことを思ってる

本人も気づかないうちにちっせーヤキモチ焼いてるんだろうな

かわいいヤツめ

でも、そんなんじゃ、羽華ちゃんには伝わらないのにね?

早く気づかないと羽華ちゃんはあっという間に誰かに取られるのに

ここは、俺が後押ししなきゃでしょう

「湊がさ、授業中に羽華ちゃんの事見てんの、洸と二人でいるのが気になってるんでしょ?」

「…さあ?」

「ふっ、早く素直にならないと洸に取られちゃうかもね?」

「……帰るよ」

最後はムスッとした表情で、俺の事を見てそのまま先に歩いていく

自分だって薄々気づいてるくせにね



どうしようもなく羽華ちゃんに惹かれていることに


素直じゃない無気力な王子に置いていかれないように後を追う

「ババ抜き大会だって、楽しみじゃん?」

「……まあ、勝つけどね」

お、今日は羽華ちゃんと話すつもりなのかな?
今夜は楽しくなりそうだ!

ガシッと湊の肩を掴んで隣を歩けば、無言で手で払われる

王子なんて呼ばれてるけど本当は恋愛初心者な可愛い少年の俺の幼馴染みが近くにある幸せに早く気づいてほしいと心から願った