レジャーシートを畳もうと立ち上がった瞬間、体が後ろに傾く

あっという間に気づけば先輩の腕の中に

て、いうか、ちょっ!?

「ふ、服!!」

「ん、あー…めんどくさい」

裸のまま後ろから抱き締めてくる

直に先輩の体温が……というか、ここで無気力にならないでほしい

「先輩、風邪ひいちゃいますよ?」

「……じゃあ羽華が着せて?…はい」

もちろん、着替えなんて持ってきてないのでここに来るまで来ていたパーカーを私に渡してくる

いや、着させてって

もう、ご褒美かな?今日死ぬんかな

そんな事を考えながら服を素直に受け取って、先輩から少し距離を取って、袖から腕を通してもらう

「…はい、着れました」
「うん」

お互い向かい合ったまま、視線がぶつかる

私の手はさっきから両手とも先輩と繋がったまま、離してもらえない

そのまま、先輩が口を開く

「何で赤くなってんの?」

「なってません」

「怒ってんの?」

「ないです」

「…見たよね?」

「…み、見ちゃいましたね」

「ふふはっ」

珍しく無邪気な笑顔で笑い出す先輩

そんなに面白かったですかね?だって、見るしかないでしょ、先輩の肉体美を!目に焼き付けておかなきゃ!!

とは思いつつも恥ずかしくなってきた……

できれば、写真に納めておきたかったと思っている自分が恥ずかしい

「ほんと、バカだね」

すぐ近くで楽しそうな声が聞こえたと思ったら、あっという間に先輩の腕のなかに閉じ込められた

「あったかいね、いつも」

「…心が暖かい証拠です」

「幼稚の間違いじゃない?」

定番のごとく首もとに顔を埋められる

思わずビクッと反応してしまう

それに気づいた先輩がふふっと笑い、吐息がかかる

「変態」

どっちがですか

なんて、言い返せずに戸惑っていたら、

「ね?やっぱり羽華ちゃんには甘いね」

後ろから遊び終わったのか裕先輩の楽しそうな声が聞こえてきた

そのまま、私の後ろに座る

むくっと顔を上げて、裕先輩をじっと見ている先輩

「湊、何でか分かってる?」

「…何が言いたいの?」

すっかり二人で話してる様子

ニコニコ顔の裕先輩、無表情の湊先輩

しばらく考えた後、湊先輩が一言

「羽華、いじめるの楽しいからじゃん?」

な、なんて人だ!いや、そうだと思ってたけど!少し期待しちゃったよ!

真顔でこんなこと言うんだもん

「先輩、離れて」

「ん」

低い声でそう言えば黙って離れていく先輩

ギッと先輩を睨み付けて立ち上がる

「洸君!戻ろう、授業始まるっ」

「ねー、俺の分のタオルないー?」

「何で、洸君まで濡れてるの…?」

湿っているシャツをパタパタさせながら湖から上がってきた洸君の手を掴み歩いた

「じゃあ湊先輩また、夜!今日はババ抜き大会ですよ!」

「え!じゃあ、俺もいく!」

「羽華ちゃん待ってるねー!!」

湊先輩は肩肘ついてこちらを黙って見ていた

先輩からしたら、何とも思わないイタズラでも、私はその度に嬉しくてドキドキするんですよ?

先輩は知らないんだろうな

嬉しい様な、意識してもらえてないことがわかって悲しいような複雑な気持ちで湖から離れた