♡♡♡

美術室に来るの久しぶりだなあ

特に最近は放課後は先輩と勉強してたから顔すら出していなかった
なんだか、少し緊張してしまう

ガラッ

「こんにちわー?」

「あー!羽華ちゃん!久しぶり~」

「お前、サボりすぎたぞー」

「九条のこと困らすなよー」

「困らせてません!」

やっぱり、皆さんいい人たちだな
部員は僅か5人

二年生は私だけで、一年なんて入部すらしていない、なのに私もあまり参加しないから、うちの学校の美術部は今年で終わりなんて言われちゃったりしている

絵の具や紙の香りが漂う教室

「私の絵、どこにおいてありますかー?」

「あそこ、2番目の棚ー」

あまり広くはない教室なので作業をしている先輩達にぶつからないように棚まで進む


あったあった!あの日の描きかけの風景画

先輩達が掃除してくれていたのか、ホコリもかぶっていなくて、綺麗なままだった

「みなさん、掃除してくれてたんですか?」

「俺たちもしてたけど、ほとんど樹がしてくれてたんだぞー」

「部長が?」

樹先輩
美術部の部長で、どんな人かと聞かれると、優しい、とにかく優しいかな

お礼言いたいなあ、しばらくはなしてなかったし、そう思って辺りを見回すけど樹先輩は見当たらない

「樹先輩は?」

「後ろ」

「わあ!」

後ろを向くと樹先輩が私を見下ろしてた

薄い茶色の髪は、少し癖があって無造作にセットされていて、優しい形の整った目は、九条先輩、如月先輩に並ぶうちの学校のイケメンといわれている

「羽華久しぶり」

「はい!お久しぶりです!」

「その絵、また描き始めるの?」

「そうなんです、ずっとそのままだったから、何とか春のコンクールに出したいなあって思ってて…、あ!掃除、ありがとうございました!」

「いえいえ、じゃあさ、俺、その絵好きだからさ、完成したら一番に見せて?」

「ぜひ!あ、私もう行かなきゃ行けなくて、
 画材いくつか、借りて行きますね!」

「わかったよ、あ、羽華!」

「はい?」

振り返る前に、ふわっと樹先輩に後ろから包まれて

優しく顔に触れてくる先輩

「これ、顔にまつげついてたよ」

抱き締められた体制のまま上を見上げると優しく微笑んでいる樹先輩と目が合う

「あ!ありがとうございます!」

先輩は、本当に優しいなあ

「じゃあ、次はテスト終わった頃に顔だしますね!」

そう言って私は旧校舎の美術室に走り出した