合同授業、早くも四日目

四日間、ただひたすらに出された課題を解く毎日に皆ヘトヘト、さすが特進科…

でも、授業を受けている教室からは湊先輩の姿がよく見えて、私一人だけルンルンと授業を毎日受けている

私からの視線に気づいている先輩は、あえてこちらを見ることはしないから目は合わないけど

代わりに、湊先輩のとなりに座る裕先輩が何度か私に気づいて手を振ってくれる

お昼は、湖の近くで皆でご飯を食べている

湊先輩は、ご飯を食べたらすぐに寝ちゃうから、結局あんまり喋れないんだけどね…

「湊先輩!起きてくださいっ」

「うっ……ちょ、重い」

なかなか起きてくれない先輩のお腹の上に午後からの授業で使う教科書を乗っけた

「せんぱーい、今話してくれないなら、夜部屋に忍び込みますよー」

「…既にそうじゃん」

この間、先輩に部屋に入れてもらえなかったから、その後からは先輩がお風呂にいっている間に同室の裕先輩にこっそり中に入れてもらって先輩が帰ってくるのを待っている

まあ、先輩が戻ってきたら十分もしないうちに追い出されちゃうんだけど…

教科書を下ろした先輩は、ゴロンと反対を向いて寝てしまう

本当によく寝るなあ、そんなに眠いのかな?
いつもなら諦めて何だかんだと嫌々、皆の会話に入ってくれるのに今日はそうしない

それなら、寝かせてあげよう

私の後ろで寝ている先輩に持ってきていたタオルケットを掛けて洸君達の会話に加わる

「あ、羽華!九条のやつ、羽華に起こしてもらっておいて起きないとか生意気だな!ほら、俺の隣においで?」

「あー、湊昨日サボってた分の課題、夜中までやってたから眠いんだと思う、羽華ちゃんごめんね?」

「え!先輩、ここでもサボってるんですか?!」

「サボってるっていうか、寝てるんだよねー」

「あー…」

それなら知ってる、先輩は教室にこそいるけどほとんど机にうつ伏せになって寝ている

それで、課題を出されちゃったんだ…

「先輩も要領悪いですねー、合宿中くらい黙って授業受ければいいのに」

「なに?」

「ムゴッ!?」

後ろから捕まるように、足に挟まれて口を大きな手で押さえられる

今まで寝てたと思ったのに、いつの間に起きてたの!?

「で、俺がなに?」

「何でもありましぇん」

向かい合うように先輩の足の間に座らされて、頬っぺたを両方から引っ張られてうまく喋れないんですが…

眠そうな目に睨まれて、思わず目をそらす

「おいっ、九条!羽華から離れろっ、…っ力つえーなっ」

「君が軟弱なんじゃん」

「うっせえええ」

先輩の腕の中にいる私を引っ張っている洸君だけど、しっかり先輩にホールドされているから、ちっとも身動きがとれない私

頑張ってくれている洸君をよそに、私の肩に顔を埋めてまたうたた寝を始める湊先輩

よほど眠いんだなあ

「先輩、いつもみたいに最初から授業抜け出してれば、先生に何も言われなかったんじゃ?」

「そーだそーだ、わざわざ俺らの視界に入ってくんなよ!」

いや、私としては授業中に先輩を拝めるのは嬉しいけど…

学年一位の先輩

今まで授業に出なくても先生方に何も言われなかったのは、いつもほとんどテストで満点に近い点数を叩き出してトップでいるから

だから今さら授業に出る必要は……