合同授業だって、騒いでたのは私だけだったし、先輩は前から全然楽しみにしてなかった
ここでサボるのは当たり前なのかもしれない、普段の授業からサボってる訳だし…
それに、付き合ってる訳じゃない…一緒にいる義務も権利もない
だけど、それでも
「私は、一緒にいたかったんです…」
特別が欲しかった訳じゃなくて、いつもみたいに一緒にサボって、ただいつもより少しだけ多く一緒にいる時間が欲しかったから
思わずきゅっと目をつぶって俯く
瞬間、頬がひやっと何かに包まれる
目を開けて包んでいる何かにそっと触れてみる
大きくて冷たい先輩の手が私の顔を優しく持ち上げる
視線の先にいる湊先輩は優しく微笑んでいて
「言わなくても、羽華なら見つけてくれるでしょ」
「!!」
先輩はずるい
さっきまであった心の重りが一気に軽くなる
「そうですよ、ストーカー魂なめないでください!」
「…キモい」
「なん!?」
私から少し距離をとって、また寝転ぶ先輩
負けじと近づいて、隣に寝転ぶ
「ねえ、変態」
「はい?」
「ははっ、返事しちゃダメでしょ」
背中越しに先輩が笑っているのがわかる
暖かいこの空気が好き
よく笑ってくれるようになった先輩
優しい風が頬を撫でる
私も釣られて笑っていたら、
「いつでも、……俺から離れていいから」
は
何、言ってるの?
そんなこと、どうして…
「羽華?」
静かになった私が気になったのか先輩が私の髪に優しく触れてくる
けど、
パシッ
「!!」
「………何を言ってるんですかっ」
初めて、先輩の手を私から離した瞬間
驚いた先輩の顔、その瞳に映った私の顔は酷いもので、自分でも気づかないうちに涙が溢れていた
「離れないっ、離れません!それに、先輩は私に傍にいてほしいって言ってくれたじゃないですか!」
「…うん」
「それなのに、何ですか!バカにしてるんですか?いきなり、こんなっ」
「うん、羽華…ごめん」
何で先輩が苦しそうなの?
自分から言った癖に、どうして?
伝わってなかったの?私がどれだけ先輩でいっぱいなのか
溢れてくる、目まぐるしく回る感情に涙が止まらない
先輩はまた、ごめん、と小さく呟くと私の腕を優しく引いて大きな自分の腕の中に閉じ込めた
暖かい、今は、こんなに近くにいるのに、何故か寂しく感じるのは、想いがないから?
ねえ、先輩
足りてないなら、何度だって伝えるよ
「よく聞いてくださいっ、私は絶対に先輩から離れないっ、先輩がどんなにうざがっても離れてあげません!……先輩が幸せに、なるまでは、絶対に」
「……うん、何回も聞いた」
「…先輩の幸せは、私が見届けます、だから、それまではっ…」
そばにいさせて
最後まで言えなかったのは、先輩の私を抱き締める力が強くなったから
苦しくて、辛いね
先輩は何を考えてるの?
きっと、私の知らない先輩の世界があるんだろう
教えて貰えなくてもいいの
だけど、
「もう言わないでください、こんな事」
「…………」
「次言ったら、ストーカー行為過激化します」
「うん」
「トイレにもついていきます」
「…うん」
「お風呂も一緒に入ります」
「離れて」
先輩から抱き寄せてくれた癖にぐっと肩を押して距離を取られる
冷たい言葉とは裏腹に楽しそうに笑っている先輩
複雑で、面倒くさい人だ、本当に
そんな先輩が好きで仕方ないんです
「私も大概面倒くさいしね」
「え、今さら」
「うるさいですよ」
ふわっと一瞬笑って、私の頭を一撫でして、森林の出口に向かって歩きだす先輩
その後ろをスキップで着いていく
「先輩、スキップできますかー?」
「………」
「え、本気で?」
「…うるさい」
「ちょ、先輩!やってみてくださいっ、痛たっ!あ、先輩!!」
いつもと違った、先輩の言葉を
私はこの時にきちんと聞いておけば良かったのかもしれない
それを知るのは間だ先の話

